桃核承気湯

桃核承気湯(とうがくじょうきとう)には、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、桃仁(トウニン)、経皮(ケイヒ)、甘草(カンゾウ)の5つの生薬が入っています。

大黄:熱を冷ます作用や便通を改善する作用があります。

芒硝:硫酸ナトリウムで、緩下作用や瀉下作用、血液凝固抑制が認められています。

桃仁:「桂枝茯苓丸」のページで解説したように、血のめぐりを良くする作用や腸を潤す作用があります。

経皮:漢方薬の処方にはよく使われている生薬で、血液を温めて血液循環をよくします。

甘草:マメ科の植物です。こちらも漢方薬の処方には多く使用されていますし、食品の甘味料としても多用されています。強い甘みが特徴で、炎症を抑える作用や他の生薬を調和する働きがあります。

便秘を伴う月経不順の方に

桃核承気湯は、月経痛、生理不順や便通をよくするので、女性に多く処方される漢方です。血行障害や瘀血など、月経トラブルや「血」に関する病気の改善にもよく使われます。

大黄の主成分はセンノサイドで、タデ科の根茎を乾燥させたものです。様々な漢方薬の生薬に含まれていることと、大黄の薬効の効きめが峻烈、快速なため「将軍」との別名を持ちます。この大黄のみで処方された漢方薬は「将軍湯」と呼ばれるようです。

血液の循環をよくするほか、不安やイライラをおさめたり、しずめたり、ホルモンバランスを整える効果もあり、体力のある人や顔色がよくて、のぼせ気味の人、下腹部が張って便秘気味の人に向いている漢方でしょう。

便秘と言っても種類があります。一般には、機能性の便秘と呼ばれて大まかに分けると3つに分類します。

便秘のタイプによる漢方の処方

・けいれん性便秘

ストレスなどの影響で、腸が緩まず便がスムーズに出ません。腸の筋肉の緊張を緩め、ストレスの軽減につとめることを優先的に考えた漢方を処方します。「加味逍遙散」などもお勧めですが、「桂枝加芍薬湯」もお腹が張るしぶり腹の方には処方します。

・直腸性の便秘

これは、便意があるのに我慢をしてしまうことを繰り返すことで、便意を感じなくなってしまうタイプの便秘です。この場合に今回紹介した、強めの漢方である「桃核承気湯」を処方して、便意を我慢しないで習慣づけるようお話しています。

・弛緩性の便秘

この弛緩性の便秘は、本来便というのは、腸の蠕動運動の働きで便を押し出します。その押し出す動きが弱くなると便が出にくくなります。また、便を出すときに腹力をかけますが、その時に必要な腹筋などの筋力の低下も原因です。そして、腸内に停滞する便から水分が抜けて便が硬くなっていることで、スムーズに排便ができないのです。

弛緩性の便秘の場合は漢方の処方も様々です。腸に力をつけて蠕動運動を活発にして、便を押し出す力を養う「補中益気湯」「小建中湯」「大建中湯」で元気になるような漢方を処方する場合もあります。

漢方で「中」は胃腸のことを意味し、「補中」「建中」は胃腸を元気にするという意味があり、胃腸が元気になれば、おのずと便秘も改善するのです。

その他の便秘に処方する漢方

三黄散(さんおうさん)は大黄、黄苓、黄連の3つの生薬から出来ている漢方ですが、お通じによく効くうえに、身体の熱を冷ます作用もあり、のぼせや、赤ら顔の方によく効く処方でもあります。

桂枝加芍薬薬黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)は胃腸の弱い人に処方されるもので、お腹が張って腹痛がある場合などの場合に芍薬、甘草、生姜により腸の働きを正しく整えることで便通を促します。大黄の下剤効果も期待できます。温めるタイプの処方ですから、冷え性の方向けの便秘薬です。

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)は、どのタイプにも当てはまらない場合によく処方される漢方薬です。虚証や実証のどちらでも使えますが、冷え性の方は腹痛を起こす場合があるので注意します。

他にも食事性の便秘があり、これは、言葉通り食べるものが偏っていることが原因の便秘です。食物繊維の少ない食生活の方や、極端に食べるものが少ない方によくあります。やはり、ある程度の量の食事や食物繊維のある野菜などをバランスよく食べることが一番大切です。

「桃核承気湯」に含まれる、桃仁は青酸配糖体のアミグダリン、芒硝は硫酸ナトリウムで、過度な投与となると、胃腸障害や腹痛の原因になります。子宮収縮作用や充血作用があるので、下痢気味の方や妊婦さんには投与しません。

しかし、妊娠するとどうしても便秘気味になります。当医院で妊婦さんによく処方するのが「潤腸湯」です。「潤腸湯」については次回解説します。