呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

呉茱萸湯は、呉茱萸(ゴシュユ)、人參(ニンジン)、大棗(タイソウ)、生姜(ショウキョウ)の4つの生薬で出来ています。

呉茱萸:健胃作用、鎮痛作用、利尿作用があります。

人參:消化機能を高め、体力を回復させる作用があります。

大棗:健脾、鎮静などの効能があります。

生姜:発汗や健胃、鎮吐などの効能があります。

体力は中等度で、手足が冷えて肩がこる、頭痛及び頭痛に伴うはきけ、嘔吐、しゃっくりなどに処方します。心下痞鞕(シンカヒコウ)と呼ばれる、みぞおちの抵抗や圧痛がある場合は「呉茱萸湯」が効果を得られやすいとされています。

冷えを取ることで頭痛を抑える

手足が冷えがちで肩こりのある方や、頭痛からくる吐き気のある方は身体の冷えが強い体質です。冷えと頭痛が関係するのは、体内の機能や体力が低下しているからです。

「呉茱萸湯」で身体を温め頭痛を抑えます。頭痛及び吐き気もある方は、胃腸が弱っていることから胃に負担のかかる通常の痛み止めを使うのが難しいケースがあります。「呉茱萸湯」なら、胃が弱っている時でも飲みやすいでしょう。

漢方では、ズキズキする頭痛は「冷え」が体の中のめぐりをじゃましてしまい、上部(頭)への「気」や「血」の流れが乱れてしまったため生じると考えます。

「呉茱萸湯」は、身体の中心のお腹を温め「気」や「血」の流れを乱していた冷えをとり除くことで、頭痛を鎮めるのです。

片頭痛は発作性の激しい強い痛みが特徴で、ズキンズキンと頭が痛み、しばしば吐き気をともないます。またうなじや肩のこりをともなうような緊張型頭痛などにも使われます。

西洋薬であるロキソニンやボルタレンなどのNSAIDsと呼ばれる痛み止めや、トリプタン系の痛み止めなどを使用しても頭痛が改善しないという方にも有効な場合があります。

臨床の場では、頭痛の発作回数が減ったり、痛みの強さが弱まったり、冷えや月経痛、肩こりも改善されたという報告があります。西洋薬の鎮痛薬は、胃腸障害が副作用として出やすいため、副作用軽減のためにも「呉茱萸湯」は期待されています。

薬剤乱用頭痛にも効果があります

痛み止めとして良く処方されるロキソニンやカロナールは、対処法としてよく効果を発揮します。しかし飲み続けることで、どんどんと効き目がなくなることがあります。そのような方は薬物乱用頭痛と診断できます。

診断基準は、

・頭痛が 1 ケ月に 15 日以上ある

・1 種類以上の急性期・対症的治療薬を 3 ケ月を超えて定期的に乱用している場合

・3 ケ月を超えて、定期的に 1 ケ月に 10 日以上エルゴタミン、トリプタン系薬物、オピオイド、または複合鎮痛薬を使用している

・単一成分の鎮痛薬、単一では乱用に該当しないとされるエルゴタミン、トリプタン系薬物、鎮痛薬、オピオイドのいずれかの組合せでも合計が月に 15 日以上の頻度で 3 ケ月を超えて使用している場合

・頭痛は薬物乱用により発現、著明に悪化しているといえる場合

そういう方は、現在使っている頭痛薬を一旦中止する必要があります。痛み止めを中止すると不安でしょうから、そのような場合にも「呉茱萸湯」が助けになることになります。

薬物乱用頭痛と呼ばれる症状は、もともと偏頭痛持ちの方が多いでしょう。効果が出るまで 2 週間ほどで十分に効いてきますが、冷えの強い場合にはもう少し続けること効果を実感する場合もあります。

偏頭痛の発作を抑えるためや緊張型頭痛にも効果が期待できることから、冷えを実感して、頭痛を繰り返す、頭痛から吐き気をもよおすなどにお悩みの方は、試してみてください。

 

「釣藤散」も頭痛に使われますが、「釣藤散」は体を冷ます働きがあるので、冷え性の人や女性には「呉茱萸湯」の方が向いています。