潤腸湯(じゅんちょうとう)
大黄(ダイオウ)麻子仁(マシニン)杏仁(キョウニン)桃仁(トウニン)厚朴(コウボク)当帰(トウキ)地黄(ジオウ)黄苓(オウゴン)枳実(キジツ)甘草(カンゾウ)
麻子仁:麻という植物の種子が腸を潤す作用をします。
桃仁:桃の種子で血の巡りを良くする作用と腸を潤す作用です。
大黄:腸の蠕動運動を刺激して、便通に働きかけます。刺激性があり下剤としての働きがあります。
杏仁:バラ科のホシアンズの種子で、腸を潤します。
厚朴:便秘に伴う膨満感を和らげます。
枳実:ミカン科のダイダイで胸腹満痛に効果があります。
地黄:補血作用や陰を補い滋潤作用があります
当帰:補血作用で身体を暖めて血を巡らせます。
黄苓:腸の熱を冷まします。
甘草:腸管の過剰な収縮を和らげる作用があります。
便秘の処方には良く含まれている大黄
大黄の主成分であるセンノサイドを詳しく解説しますと、センノサイドは配糖体と呼ばれる活性成分と配糖が結合したものです。配糖体は消化酵素では分解されません。ですからそのまま大腸に運ばれて、腸内細菌によって分解されてまた、糖とレインアンスロンになります。
その生成されたレインアンスロンが腸の粘膜を刺激して腸の動きを活発にさせると言われていて、先日の「桃核承気湯」と同様に「潤腸湯」にも含まれています。最近は、水分の吸収にもレインアンスロンが関わることが判明しています。
便秘には潤いが必要
麻子仁、桃仁、杏仁はどれもが植物の種子です。この種子の油が潤いを与え、腸を潤す作用を発揮します。血の流れを改善する生薬や潤いを与える生薬などが総合的に働いて便秘を改善する処方なのです。
「潤腸湯」は体力のあまりない「虚証」の人や、高齢者の便秘によく処方します。体液が不足することで、腸内のうるおいがなくなり乾燥することで便秘を起しています。便が出たとしても、コロコロとウサギの糞のような便が少し出るだけで、残便感があるようなタイプです。
水分が少なくなった状態は漢方では「陰虚」ですから、潤いを与える漢方薬を処方することで、便が軟らかくなり排出しやすくなります。
虚証か実証かを見極めることが大切
漢方薬を便秘に処方する場合は、「実証」か「虚証」を見分けて処方することが大切です。「虚証」の方に「実証」の方向けの処方をすると腹痛や下痢などの副作用が起こる可能性があります。
高齢者の方や「虚証」と判断される方には、八味地黄丸や麻子仁丸や潤腸湯などがをよく処方します。年をとるとのどの乾きを感じにくくなるのですが意識して、こまめに水分を取るように注意しましょう。
妊婦さんの場合は「虚証」と判断するので、「潤腸湯」を処方します。
やはり食生活を大切にしましょう
妊娠中の便秘の原因の多くは、黄体ホルモンの影響が大きいようです。黄体ホルモンは、赤ちゃんの成長や胎盤の形成に必要なのですが、一方で腸の蠕動運動を抑える作用もあり、腸の動きが鈍くなります。又、週数が進むと赤ちゃんの成長にともない、子宮が大きくなり胃や腸を圧迫することで、食事の量が減ることも原因の一つです。
赤ちゃんがお腹の中にいる間は大変ですが、なるべくバランスを考えた食事を取り、食物繊維の豊富な献立を工夫しながら、上手に漢方なども利用して乗り切って下さい。