最近は、ブライダルチェックを受けられる方が多くなったというお話をしました。女性だけではなくて、男性も一緒に受けられています。内容について少しお話します。
男性用チェック内容
●基本検査(問診、外診、一般検査)
●血液検査(貧血・感染症・風疹抗体・肝臓機能(HBV抗体、HCV抗体)・腎臓機能・血糖値など)
●性感染症検査(HIV(エイズ)、クラミジア、梅毒など)
●尿検査(タンパク・糖・鮮血)
●腫瘍マーカー(CA199・CEA)
●精液検査・精液細菌培養
女性と同じように会社の健康診断に含まれている項目があれば、その部分を省略することも可能です。必要なものだけを選択してください。普通の健康診断で検査しない精液検査のみ受けることもできます。
精液検査 の内容
従来は、精液1㎖当たり、約5000万匹以下の場合は、乏精子症とされてきました。しかし、精子の数が正常であっても赤ちゃんができない場合もあります。
逆に精子の数が2000万匹以下と少ない場合でも、妊娠させる能力のある方もいらっしゃいます。一概に精子の数だけで不妊かどうかは判断できないと言ってよいでしょう。
しかし、男性不妊かどうかを判断するには、いくつかの精液の検査項目があるので紹介します。この精液検査は、受精能力を調べる検査ではありません。
精液量:1回の射精で採取できる精液量です。単位はmlで表示します。
活動精子数: 全体の中で、運動している精子の数です。%で表示します。
精子数:1回の射精で精液に含まれている精子の固体総数を表します。
血球細菌・白血球・凝集 ・PH 粘稠度・索糸性 など
精液凝集とは?
女性が卵巣に卵を持って誕生するのとは違い、男性は思春期の頃になり初めて精液が造り始められます。ですから、細胞でありながら、少し違った性質を持っています。 極わずかではありますが、身体に吸収されることで、異種タンパクと身体が認識してしまうと、身体がこれに対抗して、精液に対する抵抗力を持ってしまうのです。
学問的には、「精子アレルギー」と呼ばれて、じんましんなどのアレルギー反応と同じ理屈です。 この抵抗力が、精液の中の精子を固めるという作用が働き、精液が凝集するのです。
「抗精子凝集抗体」や「抗精子不動化抗体」などいくつかの種類があります。互いに凝集した精液は子宮の中に入っていくことは困難です。そのために治療して改善する必要があります。
不妊の原因は、男性側にも50%の確率で関わっています。男性側の問題が発見されることで、女性側の負担も軽くなります。タイミング法や、子宮内授精で受胎できるのであれば、それに越したことはありませんが、無理であるならば、体外受精や顕微授精を考えなければいけません。
膿精液症とは?
精液の中に白血球が混ざってしまっている症状です。尿道や精管が炎症を起こしている場合や、クラミジアなどが原因の場合もあります。白血球が精液の中に混じっていると、精子の活動を抑えてしまうことや、精子のDNAにダメージが起きることがあるのです。
尿道以外にも、精嚢腺(せいのうせん)や前立腺、精子が通る精管などに炎症を引き起こします。精液の70%を占める、精嚢液は、精嚢で作られていて、精子の活動に重要な体液です。精嚢が少なくなり、精子の活動が鈍くなると不妊にもつながります。
膿精液症を発症すると、受胎する確率が低くなってしまいます。クラジミアと同様に性感染症の一種ですが、大腸菌や結核菌などの細菌感染が原因で、膿精液症を引き起こしていることもあります。
放っておいて炎症を悪化させてしまうと、完治まで時間がかかることもあります。精液を培養して、膿精液症の疑いがあれば、炎症をおさえる抗生物質を、服用してもらいます。そして、飲み終えた次の月に、もう一度精液検査をおこない、精液の中の白血球の数が少なくなっているかを確認します。
他にも、精子の数が少ない乏精子症の可能性や、精子の運動能力が弱い、精子無力症も考えられます。精液検査で、精液量、運動率、精子濃度、奇形混在率なども調べてお知らせすることができます。
検査するための精液の採取は、当院の個室で行うことも可能ですし、検査容器をお持ち帰りいただき、後日提出いただいても構いません。その際に、注意点などを説明させて頂きます。
男性不妊に漢方も!
漢方薬を使い、男性不妊の治療に役立てることもできます。身体の状態をよくすることで、精子の数を増やしたり、運動率を上げたりするなどの手助けができることもあります。
西洋の治療とは違い、漢方の場合は、女性も男性も強固な身体づくりが肝心ですから、症状やタイプによって健康な身体へ導く手助けとなる漢方を処方します。次回は、男性不妊によく使われている漢方のお話をさせていただきたいと思います。