茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)は、猪苓(チョレイ)、芍薬(シャクヤク)、蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、桂枝(ケイシ)、茵蔯蒿(インチンコウ)の6つの生薬からできています。五苓散(ごれいさん)と茵蔯蒿(いんちんこう)を配合した漢方薬です。
猪苓:利尿作用があります。
沢瀉:利尿作用・鎮静作用・健胃作用・抗めまい作用があります。
蒼朮:健胃作用・利尿作用・発汗作用があります。
茯苓:利尿作用・鎮静作用・健胃作用・抗めまい作用があります。
桂枝:発汗作用・解熱作用・鎮静作用・健胃作用・理気作用などがあります。
茵蔯蒿:利胆・消炎・解熱作用があります。
「茵陳五苓散」と陳という漢字を使用している場合もありますが、正しくは「茵蔯五苓散」です。
茵蔯蒿は、キク科のカワラヨモギの頭花です。頭花とは、タンポポやひまわりなど多数の花が集まって一つの花に見える花を指します。カワラヨモギの頭花は独特の強い香りがありますが、生薬はほとんど強い香りのものが多いです。茵蔯蒿は、香りも強く、苦みも強いのですが、黄疸に良く効くと言われています。
湿熱を改善する
「猪苓湯」でも説明した「湿熱」ですが、茵蔯蒿は「湿熱」という状態を除くことで有名な生薬です。熱を冷まして湿を取り除く働きがあります。
湿気の多い夏や、暴飲暴食した次の日に、口が粘っこく感じることがあると思います。「湿熱」をつくる原因は、甘いものや脂っこいもの、お酒の飲みすぎなど胃腸に負担が掛かる状態や、イライラすることなども「湿熱」の要因です。身体の中がどろどろとすると、胆汁が詰まったり、尿が出にくかったりして流れがスムーズにいかず毒素が溜まります。
すると、湿疹やかゆみ、胃のムカつきを引き起こしたりしますが、湿気と熱を除くことで淀みを解消し、さらさらと流れが良くなるよう助けます。
水分代謝を良くする「五苓散」に含まれる沢瀉(タクシャ)、猪苓(チョレイ)、茯苓(ブクリョウ)、白朮(ビャクジュツ)の働きと脾を強化する白朮(ビャクジュツ)、温める作用のある桂皮(ケイヒ)、黄疸に有効な茵蔯蒿(インチンコウ)が合わさり、湿熱という湿気の毒を取りのぞくのです。
肝の大事な働き疏泄作用(そせつさよう)
疏泄作用とは全身の気を調節する機能を言います。肝や肺は、共に気の調整をします。肝は気の上昇性があり、肺は粛降作用と言い下げる働きがあり、肝の上昇性と肺の粛降作用で、気のバランスをとっています。気のバランスが整うと、血の流れも正常を保ち、脾や胃もしっかりと働く事ができます。
凝り固まった肝をほぐして、胆汁の流れをよくして、黄疸の改善に用いて気や血の鬱滞をとるのです。
肝をほぐし、解熱作用のある代表に柴胡という生薬もありますが、柴胡よりも薬効が穏やかなため、潤いが不足して流れが滞る陰虚の方にも安心して使いやすい生薬で、柴胡の代わりに使います。
黄疸に使う薬として有名ですが、黄疸だけではなく、湿疹や蕁麻疹などの皮膚の湿熱という毒を取る効果もあります、身体が冷えたり、食欲が無くなったりすると効きづらくなるので、体調管理は万全にしましょう。
皮膚掻痒などの皮膚症状の改善にも処方します。肝炎による強い倦怠感や食欲不振、などの湿熱症状に長期的に服用することができます。