釣藤鈎(チョウトウコウ)、陳皮(チンピ)、半夏(ハンゲ)、麦門冬(バクモンドウ)、茯苓(ブクリョウ)、人参(ニンジン)、防風(ボウフウ)、菊花(キクカ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、石膏(セッコウ)の11種類の生薬からできています。
釣藤鈎:鎮静作用、抗痙攣作用、解熱作用があります。
石膏:解熱作用、消炎作用、止渇作用があります。
茯苓:利尿作用、鎮静作用、健胃作用、抗めまい作用があります。
半夏:制吐作用、去痰作用があります。
防風:発汗作用、発散作用、鎮痛作用があります。
菊花:解熱作用、消炎作用、発散作用があります。
人参:強壮作用、抗ストレス作用、賦活作用、補気作用があります。
麦門冬:鎮咳作用、去痰作用、解熱作用、血糖降下作用があります。
陳皮:健胃作用、鎮咳作用、理気作用があります。
生姜:発汗作用、制吐作用、健胃作用、鎮咳作用があります。
甘草:鎮痛作用、抗痙攣作用、鎮咳作用があります。
石膏は、充血や炎症をひき、のぼせをさますことから寒性薬の役割りをし、脳の血管を広げて循環をよくして痛みを和らげます。
茯苓や半夏は、水分循環をよくし、めまいや耳鳴りの改善を助けます。
防風や菊花は、痛みを発散して、上がった気を下げます。
人参は、滋養、強壮の役目があります。
麦門冬は身体を潤すことで熱を冷まします。茯苓や半夏は水分の循環を良くし、めまい・耳鳴りの症状を改善させます。
人参には滋養強壮に働きます。
釣藤散の特徴は、胃腸が弱っている方に優しいという点です。
陳皮・生姜・茯苓・半夏・人参は胃腸の働きを整える役目です。
様々な生薬が合わさり、鎮静作用が働いて、身体の中の過剰な「気」を下げて興奮状態が鎮められ、精神の興奮から起こる頭痛や肩こり、のぼせなどの症状が和らぎます。
頭痛
「釣藤散」は、中高年で血圧が高めで、慢性的な頭痛や頭重感があり、頭痛だけでなく、イライラや落ち込み、めまいや耳鳴り、不安や不眠といった症状にも使われます。起床時から午前中にかけての頭痛の症状に有効です。
交感神経と副交感神経のバランスが崩れると自律神経の乱れから現れる症状が認められます。
このような症状があらわれる原因は、漢方では「気」の乱れと考えます。「気」が上半身に集まることでのぼせているような場合は「釣藤散」が、体の中であがった「気」を下げます。
西洋薬のようにはっきりとした痛みの物質を押さえるような働きではありませんが、経験的に効果があることが知られていることから、日本頭痛学会においてもエビデンスレベルBとされて認められています。
釣藤散が合うのは、中間からやや虚証の方で、体力はわりとあるという方に向く処方です。身体を冷ます漢方になるので、冷えがない人に向き、胃腸が弱っている方も服用できます。
セロトニンの働き
内因性のセロトニンの働きが頭痛に関係している可能性があると言われています。
セロトニンは脳内で働く神経伝達物質ですが、自律神経系との関係がとても深く、心身の活動やストレスなどに反応して、脈拍・血圧・呼吸などをコントロールするために分泌されます。
痛みを抑制する働きや血管の収縮など、頭痛の発生に深く関係しており、抗ストレス作用もあります。
主薬の「釣藤鈎」には、脳血管を広げて脳の血流をよくするだけでなく、セロトニンを増加させる作用が確認されています。セロトニンを増加させることで気持ちを落ち着かせます。
アミノ酸の一種であるトリプトファンは、脳に運ばれて、セロトニンを生成する働きがあります。トリプトファンを多く含む食材を食べることも理にかないます。
納豆、豆腐、豆乳などの大豆食品、カツオやマグロなどの魚などの良質なたんぱく質を含む食材を意識して摂ると良いでしょう。
頭痛に効くツボ
頭痛の痛みに効果的なツボをご紹介します。
百会(ひゃくえ)
両耳と鼻の延長線が交わるところから、頭のてっぺんに向けた頭頂部にあるツボです。体の中心に向かって垂直に押してください。
風池(ふうち)
耳の後ろの骨と、後頭部のくぼみの中間にあるツボです。
完骨(かんこつ)
耳の後ろにある、乳様突起と呼ばれる骨の膨らみの下の後ろ側にあるツボです。
天柱(てんちゅう)
風池より少し上で、首の骨の両側にある太い筋肉の外側のくぼみにあるツボです。
この「天柱」は痛みに関係する神経が集まっていて、西洋医学でも疼痛の緩和に有効とされているツボになります。
合谷(ごうこく)
手にも頭痛に効くツボがあります。頭痛以外にも生理痛、歯痛、肩こりなどにも有効とされています。
人差し指と親指の骨が合流する部分から、少し人差し指側に「万能のツボ」と言われるツボがあります。両手の両方のツボを交互に押してください。