半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)は、半夏(ハンゲ)、厚朴(コウボク)、茯苓(ブクリョウ)、蘇葉(ソヨウ)、生姜(ショウキョウ)の5種類の生薬からできています。
半夏:咳を抑える効果や気逆を治し、心下の水滞を取り除く作用があります。
厚朴:気を巡らして気逆や胸満、腹満を直します。
茯苓:身体の水分の循環をよくし、鎮静作用があります。
蘇葉:収斂作用、利尿作用、去痰作用、筋弛緩作用があります。
生姜:発汗や健胃、鎮吐作用があります。
精神を落ち着かせる漢方
精神に作用する漢方薬もあり、副作用が少なく、穏やかな効き目が好まれて精神科でも多く使われています。半夏厚朴湯は、よく「喉に何か詰まったような感じ」と訴える患者様に処方すればよいと言われていて、聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?
鎮静、筋弛緩作用や精神を安定させる作用があり、気分をリラックスさせて落ち着かせることができます。その結果、不眠症や神経症に効果的と言われています。嘔吐や痰を切る作用や胃を丈夫にする作用もあるため、つわりにも効き目があります。咳を抑えることや、胃炎にも効果が期待できるでしょう。冷え性で、疲れやすい方、気分が沈みがちな方が処方すると効き目があります。
漢方を処方するときに大切なことは、「証」をしっかりと見極めることです。「実証」と「虚証」の違い以外にも「寒熱」という見方もあります。この「寒熱」とは、体温が高い低いではありません。代謝の良さや、本人が自覚的に熱い、寒いと感じることで、熱を測ってみると体温は上昇しているが、本人は寒い寒いと訴えれば「寒」と判断します。「寒熱」は、「陰と陽」と表現されることもあります。「証」に、「実証」「虚証」「中間証」とあるように、「熱」「寒」「中等」と3つに分けられます。
漢方には個人差がある
漢方薬は、効果の現れ方に個人差があると言われていますが、効く方には顕著に効果があります。効かない方は、全く効かないとなるのですが、「証」の見立てが間違っていれば、効果が見られないと感じます。
漢方薬は、痛み止めのように、飲めば直ぐに痛みが治まるようなものではないのかも知れませんが、穏やかに効き始め、症状が軽くなっていきます。1ヵ月のみ続けなければ効かないと思われている方もいますが、当医院では1週間から初めてもらい、効果を感じなければ、違う処方を考えます。自分の「証」に合わなければ、飲み続けても意味がないからです。
漢方薬は食前に飲むの?食後でもいい?
漢方薬の飲み方は、よく食前に飲むと指導されると思いますが、これには、意味があり、漢方薬に含まれる「配糖体」の成分に関係します。「配糖体」の糖はこのままでは、体内吸収されない構造になります。腸まで運ばれて、腸内細菌に糖が外されて初めて体内に吸収される構造に変化します。腸内細菌が糖を外してくれないと、配糖体は吸収されずにそのまま、体外に排出されてしまいます。
漢方薬を食前に飲む理由は、空腹であれば腸内細菌は、配糖体の処理をスムーズに行えますが、食後に飲むと、腸内細菌は入ってきた食べ物の処理に忙しく、漢方薬の配糖体を外す余裕がありません。そのため、漢方薬の吸収率が悪くなると言われているのです。
しかし、飲み忘れたときや、食前では飲みにくいと思われる方は、食後に服用しても構いません。漢方薬に慣れてくると、身体が欲していれば、スッと飲めるようになります。反対に、身体が拒否反応を示すようであれば、その漢方は合っていない可能性があります。
そんな時は、相談していただければ、処方を変更しましょう。気になることがあれば何でもお気軽に相談してください。