真武湯(しんぶとう)

「真武湯」は、茯苓、芍薬、蒼朮、生姜、附子の5つの生薬からできています。

茯苓:利水、健脾、精神の安定などの作用があります。

芍薬:補血、筋肉のけいれんを緩める作用があります。

蒼朮:健胃、整腸、利尿などの作用、水分の代謝異常を改善します。

生姜:健胃、鎮吐、発汗などの作用があります。

附子:身体を温めて、痛みを和らげます。

「真武湯」は身体の新陳代謝が落ちて、エネルギーが不足しているような倦怠感が強い風邪にも処方します。

「水」の滞っている状態を改善する効果があり、冷えによる下痢、めまいやふらつき、むくみなどにも処方します。新陳代謝が衰え、虚弱で疲れやすい虚弱体質の体質改善薬としても用いられます。

真武湯のむくみへの作用

むくみなどの症状に処方される漢方ですが、冷えにより体内の水の流れが悪くむくみとして現れていると考え、身体を温めることで新陳代謝を高めることが目的です。

新陳代謝機能が衰えると倦怠感以外にもめまいや動悸、下痢、足腰の冷え、尿量の減少など様々な症状が現れます。冷えによるむくみや胃腸の不調も現れます。痩せ型で、冷え症、むくみ、体力が落ちていて、下痢や腹痛を起こしやすいといった方に効果を発揮します。

補陽:身体を温める力を高める

温裏:冷えを改善する

これらの作用で、手足が冷えておこる疼痛を抑える働きもあります。附子は身体を温めて痛みを取る代表的な生薬です。

水分循環を改善し余分な水分を取り除く「茯苓」と「蒼朮」、痛みをやわらげる作用のある「芍薬」、健胃作用のある「生姜」が合わさることで、よりよい効果が期待できます。

身体の深部を温める

寒い季節は、女性の方は冷えとの闘いになります。一度体が冷えるとなかなか体温が戻らなくなりますね。これを「寒冷暴露」と言い、冷え性のきっかけになる場合があります。

これには、体の中心部を冷やさない工夫が必要で、使い捨て力イロなどを利用して、腰や肩甲骨の間などに張りましょう。そうすることで体温を保つことができます。就寝中はさけて下さい。

喫煙者が周りにいる人は注意が必要です。煙草に含まれるニコチンにより末梢の血管を収縮させて、体温が急激に下がります。吸い終わると体温は元に戻るそうですが、煙草を吸った周りにいる人が副流煙を吸った場合は、体温は穏やかに下がるのですが、そのまま回復しないそうです。

煙草の害はよく知られているところです。保険扱いで治療できますので、専門家に相談され禁煙できるようにしましょう。

身体が冷えることで、困った症状が引さ起こされます。上手に漢方薬を使って冷え性を改善して寒い日を乗り切りましょう。

生姜は身体を温めるか?

身体を温める作用には、生姜に含まれているジンゲロールとショウガオールいう成分が関係します。これらには相反する作用があります。

ジンゲロールは、冷受容体と温受容体を同時に刺激します。刺激された温受容体は、温感を生じますが、冷受容体を刺激するジンジャーエールは、冷感を感じるので身体が温まることはありません。冷たいと感じるだけです。

ショウガオールは、乾生姜に多く含まれ、体温を上げる作用があります。しかし、体温をあげて汗をかけば体温は下がります。ですから、生姜が温める作用があるわけでありません。

漢方に使われる生姜は、生姜の皮を剥き乾燥処理した「乾生姜」で、生姜(ショウキョウ)と呼ばれています。乾燥させた生姜はいろいろな漢方薬に入っていていますが、主な目的は胃腸の働きを整えることにあります。

上手に生姜を使い分けましょう

料理には、新生姜とひね生姜が良く使われ、様々な効能がありますが、食べ方を間違えると逆効果になります。生姜を生で食べるのか、熱して食べるのか、自分の体の状態に合わせて生姜を取りましょう。

生で生姜を食べる場合

生姜は、料理の主役というよりも、わき役ですが、あるのとないのとでは全然違います。お寿司の付け合わせとしてガリとして添えられているのは、口直しの意味もありますが、生の生姜には殺菌作用があることから、生ものを食べるときにはうってつけです。

すり下ろして薬味として使う場合にも生の生姜には解熱・殺菌効果があることから、風邪の引き始めや悪寒がする時には効果的ですから、温かいうどんなどに添えると良いでしょう。

一方で解熱作用は体の芯を冷やすことから、生の生姜を冷え性の方が食すると逆効果になります。

熱したり、乾燥させて生姜を食べる場合

生姜は熱することでショウガオールの成分が多くなります。ショウガオールが多い状態の生姜は、身体を温めてくれます。冷え性の方は効果的ですが、高熱が出た状態で生姜湯などの熱した生姜を体に取り入れると、体温が余計に上がるので逆効果です。

生姜の取り過ぎには注意

生姜は便秘の解消や新陳代謝の促進など優れた効能がありますが、効果が高い分身体への刺激は強くなります。過剰に摂取することは健康にも良い影響を与えません。

生の生姜の場合は、1日5〜10グラム、薄くスライスした場合は6枚、すりおろした生姜なら小さじ1杯程度が適量と言われています。適量以上の生姜の摂取は反対に、胃腸を荒らして腹痛の原因になったり、肌荒れの原因にもなります。食べすぎない程度に、毎日少しずつ摂取するようにしましょう。

何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。