苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)

「苓姜朮甘湯」は、茯苓(ブクリョウ)、生姜(ショウキョウ)、白朮(ビャクジュツ)、甘草(カンゾウ)の4つの生薬からできています。生薬の名前の文字を1つずつとって、名前がついています。苓→苓、姜→生、朮→蒼、甘→草です。

茯苓:利水作用で身体の水分のバランスを調整、胃内停水を改善し、胃腸機能を整える作用があります。

生姜:温めて冷えを除くとともに、血液循環を良くして茯苓と白朮の利水作用を強めます。

白朮:代謝異常を改善し、余分の水の巡りをよくします。

甘草:痛みを緩和します。

湿気の多い島国である日本に暮らしていると、皮膚の表面に水分が停滞して、冷えによるむくみや足腰の痛みに悩まされることが多くなります。このような冷えによる症状が気になる場合に、身体を温めることで痛みが和らぐとともにむくみの解消にも効果があります。

腰から下が特に冷える場合は、寒湿証と考えて「苓姜朮甘湯」を処方します。茯苓と白朮が冷えの原因となる滞った水分を除き、生姜は、身体の内部を温めて冷えを除き、血液循環も良くなり利水作用がより強まります。白朮や甘草の健脾の作用も合わさり、寒湿証が改善されると、滞った気の流れも良好となり痛みが改善します。

水と気の巡りを改善することから、めまいや耳鳴りなど自律神経を整えることで、精神安定作用がありパニック障害やノイローゼ、動悸、息切れ、頭痛などにも効果が期待できます。

よく似た名前の処方「苓桂朮甘湯」

「苓桂朮甘湯」は、メニエル病などのめまいによく処方されます。茯苓(ブクリョウ)、桂皮(ケイヒ)、白朮(ビャクジュツ)、甘草(カンゾウ)の4つの生薬からできています。

こちらも、生薬の名前の文字を1つずつとって、名前がついています。苓→茯、桂→皮、朮→蒼、甘→草です。

「苓姜朮甘湯」との違いは、生姜か桂皮の生薬の違いだけですが、「苓姜朮甘湯」は、桂皮=シナモンの気を下す作用に特徴があります。

桂皮:気の巡りをよくする作用、発汗作用があります。

「気」が上がってくることで頭が気に覆われ、めまいや耳鳴りをおこすとされています。ここに桂枝と茯苓が合わさり、上がった気を下に降ろし、めまい、頭痛、動悸、のぼせを改善します。そして、茯苓と白朮が滞った余分な水を取り除くので、めまい、ふらつきを改善します。気が上がることで神経質になることや、自律神経の乱れから起こるめまい、頭痛、動悸、息切れなどの症状にも効果があります。

・「苓姜朮甘湯」と「苓桂朮甘湯」の違いは?

入っている生薬の「生姜」「桂皮」の違いです。生姜桂皮もどちらも温める処方で似ているのですが、苓姜朮甘湯は足腰の冷えの下半身の症状に処方され、苓桂朮甘湯はめまい、ふらつきなどの上半身の症状に使用されます。

・「五苓散」「苓桂朮甘湯」の違いは?

どちらもめまいに処方されます。「苓桂朮甘湯」よりもさらに水の巡りをよくする作用が強くなったものが「五苓散」です。めまいの中でもよりむくみ、水が溜まって生じているのであれば五苓散が適しています。

・「真武湯」と「苓桂朮甘湯」の違いは?

「真武湯」もお腹の冷えだけでなく、めまいにも使用されます。「真武湯」には附子という身体の内側から温めてくれる生薬がはいっており、冷えが強い方には「真武湯」が適しています。めまいの症状でも、雲の上を歩いている、足が地についていないような症状があるときも「真武湯」が適しています。

ゆず湯で身体を温めましょう!

冬至の日のゆず湯は、邪気払い、無病息災を祈る行事ですが、1年間風邪をひかないと言われています。身体を温める効能や血行を促進する効果があるため、あながち迷信ではないようです。香りによってリラックス効果も期待できることや、美肌も作られると言われています。
浴槽に浮かべるとゆずの皮に含まれる香り成分である、リモネンやノミニンやシトラールの精油成分がお湯に溶け、血管を広げる作用が働き身体の芯から温めて、湯冷めしにくいそうです。

ゆずの栄養素

ゆずは、果肉の部分よりも果皮の部分の方が栄養価が高いです。とくにビタミンCの含有量は柑橘類の中ではトップで、ビタミンB1、B2、鉄分、カリウム、カルシウムなども含まれています。その他にも多くの栄養価があり、それぞれの栄養を紹介します。

・ビタミンC

果肉にも含まれていますが果皮の方が多く含まれていて、その量は可食部100gにつき150mg、果肉には40mgと、レモンの果汁の約3倍という驚きの量となっています。
ビタミンCの効能は、抗酸化作用が期待できます。免疫力のアップと細菌やウイルス感染を抑制してくれ、風邪やインフルエンザの予防に効果があると言われます。

・クエン酸・リンゴ酸

主に果肉に含まれている、酸味の成分で、疲労の回復、整腸作用が期待できます。

・ペクチン

種の部分には、ペクチン質という成分が豊富に含まれています。血糖値の上昇を予防したりコレステロールの値を低下させたりする効果が期待で便秘や下痢といった腸の不調を整える作用があります。

・βカロテンやβクリプトキサンチン

体内でビタミンAに変わるβカロテンやβクリプトキサンチンは果皮にたくさん含まれており、その効能は骨の形成を助け骨粗鬆症の予防に効果的です。

・リモノイド(リモネン)

柚の果皮に含まれる香り成分ですが、血行を良くし身体を温める効能があります。発がん物質を抑制する効果や、悪玉コレステロールを抑制する効果も期待されています。

・ヒスチジン

紫外線から皮膚を守る作用があると言われています。

・ヘスペリジン

果皮に含まれているポリフェノールの一種です。ビタミンと同じような働きがあり、ビタミンPとも言われています。ビタミンPは美容効果、毛細血管や末梢血管を強くします。

・アミノ酸

皮膚の保水効果のあるアミノ酸も多く含まれていて、皮膚の保水に役立ちます。

・アスパラギン

身体の不要な物質の排出を促します。

ゆずの利用方法

あらゆる栄養価が果肉より果皮の方に豊富です。果皮を有効活用することが、ゆずによる効能を余すところなく得る秘訣と言えます。
丸ごと利用するには、輪切りにしてはちみつ漬けにしたり、細く刻んで砂糖をまぶしピールとして保存しておくなど工夫しましょう。

・ゆずドレッシング

大き目のゆずの果汁を1個に対しオリーブオイルを100㎖、塩こしょう少々でゆずドレッシングを作りましょう。サラダ以外にどんな料理にも合い、大変重宝します。簡単につくれるので是非、食卓に用意しておきましょう。

・ゆずジャム

白いワタは取り除くことで苦みの抑えられた美味しいジャムができます。ゆずの皮100gに対して、砂糖を80gほど使用します。甘さはお好みで調整してもかまいません。だいたいゆずの皮に対して80~90%の割合の砂糖を使います。甘味にはちみつを加えてもいいでしょう。はちみつを加えた分、砂糖の量は減らしましょう。

1.ゆずの皮を細切りにします
2.細切りにしたゆずを1度ゆでこぼします
3.ゆずの種は分けておいて、茶袋に入れておきます
4.2の細切りにしたゆずの皮を湯でこぼしたものと3の柚の種を砂糖と一緒に鍋にかけます
5.水分がなくらるまで鍋の中で煮ていきます。少しゆるいぐらいでいいでしょう。

ゆずの種にはペクチンが含まれていて、ゆずジャムのとろみをつける助けをします。煮ている途中でとろみがついてきたら、茶袋に入れた種は取り出します。

ゆず茶に利用したり、パンに塗ってたべると爽やかな風味が口いっぱいに広がります。

さわやかな香りのゆずですが、美肌を作り、むくみの改善、生活習慣病の予防、免疫力を高めるなど、抗炎症作用、滅菌作用があり細菌やウイルスを防御してくれます。上手に活用して生活に取り入れてみてください