防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)は、防已(ボウイ)、黄耆(オウギ)、白朮(ビャクジュツ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)の6つの生薬からできています。

防已:水分代謝、鎮痛の作用があります。

黄耆:強壮、汗を止める、利水、排膿の作用があります。

白朮:健胃、整腸、利尿の効能があります。

大棗:健脾、鎮静などの効能があります。

甘草:健胃、鎮痛、鎮痙、去痰などの効能があります。

生姜:発汗や健胃、鎮吐などの効能があります。

防己黄耆湯には、胃腸のはたらきを高めるとともに、体内に溜まった余分な水分を尿として排出する効果があります。身体の水分循環を改善することで、疲れ、痛みを和らげる作用のある漢方薬です。色白で水太り体質、むくみ、汗をかきやすい、下肢にむくみ傾向のある諸症状、肥満症、関節痛、関節リウマチ、皮膚病、月経不順などの症状に処方します。

証は「虚証」や「湿証」の方になります。

水太りの方のダイエット

水太りという状態は、体の中に余分な水分が溜まりすぎて体が冷えて、脂質代謝が低下して太ってしまった状態です。この状態では、ダイエットをしても痩せにくく、膝などの関節痛や様々な症状に悩まされます。

防已黄耆湯に含まれる生薬は体の水はけを良くして、体の水分分布がうまくコントロールできることで胃腸が正常に働きます。すると体に必要なエネルギーが作り出され、むくみが取れて体を引き締まってくるのです。

水太りの方は食べすぎでもないのに、水を飲んでも太ってしまうと言います。脂肪太りとは違い、ダイエットをしてもなかなか痩せずに、中には下半身がむくむ、すぐに汗をかくという症状に悩まされる方も多いようです。

胃腸が弱い方は食べたものを消化吸収する力が弱いうえに、身体の中に余分な水分が溜まるようです。溜まり過ぎた水分が体を冷やして代謝が落ちることも肥満の原因にもつながってしまいます。

皮膚の下に水が溜まり、汗が出て、身体が重くてだるいという方によく処方しますが、水を抜くので、水分は控えめにして少なめにしましょう。

水太り以外に膝の痛みにも効果的

「防己黄耆湯」の主薬である防已黄耆には、炎症や痛みの緩和、体内の水分の排出、滋養強壮、汗を止める作用などがあります。

中年以降の女性に多く、肥満や老化によって膝の軟骨が変形して、痛みを生じる変形性膝関節症という症状にも効果があります。膝の変形が元に戻るわけではありませんが、膝に水が溜まってしまう症状などが改善し痛みが緩和されます。

関節リウマチも防己黄耆湯で改善することがあります。リウマチの原因は不明とされていすが、手足などの関節に炎症や腫れがあり、痛みを伴います。膝に現れるこの症状には、効果がある場合があります。

生薬のひとつ黄耆は肺気を補い、皮膚の張りを強めて組織修復を強めます。防己は、下焦湿熱の薬として有名でと合わせて皮水を除く為に使われています。

皮膚を強めて汗が漏れ出るのを防ぎ、皮下の水を引かせて尿として排出する薬と言えます。それと同時に、下焦湿熱を去り、水を抜くので下半身の重だるいという症状も取れてきます。

枝湯のような生薬の働きである発汗作用で汗として水を出すのとは違う対照的な水の引かせ方をます。

ダイエットに良く処方される「防己黄耆湯」と「防風通聖散」の違い

「防己黄耆湯」は、身体の水分循環をよくすることで水太りを解消します。どちらかと言うと虚証の方向けです。色白で筋肉が軟らかく、疲れやすい、汗が多く出る、下肢のむくみ、膝関節のなどの諸症状に処方します。

「防風通聖散」は、皮下脂肪が多い便秘がちの肥満症の方に処方します。実証の方、高血圧の症状で、どうきやのぼせがある方には効果がありますが、身体が虚弱な方には向きません。

漢方でダイエットが成功するとは言えませんが、体質を改善する手助けは出来ます。ダイエットの本来の意味は、食事療法、治療食を意味しますが、ダイエット=やせるという意味で使われていて、食事以外の生活習慣や運動で減量して美しいスタイルになることだと思われています。

もちろん、日頃の生活習慣や毎日適度な運動も大切です。しかし、正しい食生活を抜きにしてダイエットはできません。適正な体形を維持することは、健康的な生き方、妊娠を望む女性にはとても重要です。痩せすぎも太りすぎも、不妊の原因のひとつです。

当院では、適正な体重に近づけるように食事指導も行っております。日頃の食事をノートに書いて頂いて、アドバイスできることはさせて頂きますので気軽にご相談ください。