「半夏白朮天麻湯」は、半夏(はんげ)、白朮(びゃくじゅつ)、天麻(てんま)、陳皮(ちんぴ)、茯苓(ぶくりょう)、麦芽(ばくが)、黄耆(おうぎ)、沢瀉(たくしゃ)、人参(にんじん)、黄柏(おうばく)、乾姜(かんきょう)、生姜(しょうきょう)の12種類の生薬から出来ています。
半夏:制吐作用、健胃作用があります。
白朮:健胃作用、利尿作用、発汗作用があります。
茯苓:利尿作用、鎮静作用、健胃作用、抗めまい作用があります。
沢瀉:利尿作用があります。
天麻:鎮静作用、鎮痛作用、抗けいれん作用、強壮作用があります。
人参:強壮作用、抗ストレス作用、賦活作用、補気作用があります。
黄耆:強壮作用、利尿作用があります。
乾姜:強壮作用、健胃作用があります。
陳皮:健胃作用、鎮咳作用、理気作用があります。
黄柏:健胃、止瀉作用、中枢抑制作用、血管弛緩作用があります。
麦芽:健胃作用、消化作用があります。
生姜:発汗作用、制吐作用、健胃作用、鎮咳作用があります。
主薬である半夏、白朮、天麻の3つを取って「半夏白朮天麻湯」という名前がついています。
半夏は、湿をのぞき嘔吐をとめ、天麻がめまいやふらつきを抑えます。
白朮や茯苓、沢瀉には利尿作用があり、尿量を増やすことでめまいを和らげます。
黄耆、人参、白朮、茯苓が消化機能を整えて元気を補い、沢瀉、茯苓、白朮、蒼朮の利尿作用で余分な湿を体外へ排出させます。
陳皮・生姜の痰や湿を除く作用や気の滞りをスムーズにする効果が半夏をサポートし、麦芽・黄柏は消化力を高めます。
乾姜は身体を温め、清熱作用のある黄柏が全体の温性を緩和させたり、整腸作用を補います。
「半夏白朮天麻湯」の主薬のひとつである「半夏」は別名、サトイモ科の「カラスビシャク」で、ラッパのような形の花の真ん中から、ひげのような細長いものが1本出ていて「蛇の枕」などとも呼ばれる、田んぼの近くにはどこにでも生えている雑草です。
「ヘソクリ」と呼ばれることもあり、農家の人たちが「半夏」を集めてお小遣い稼ぎに売っていたからや、球茎の真ん中がへそのようにくぼんでいてヘソの形に似ているからなど、ユニークな呼び名もあるようです。
めまいやふらつき
「半夏白朮天麻湯」は、冷えがあり疲れやすく、頭痛やめまいが起きるという方によく処方します。めまいの原因もさまざまですが、めまいや頭痛を改善して、並行して体質も改善します。
「半夏白朮天麻湯」は、めまいの中でも、もともと胃腸が弱くて疲れやすい冷え性の体質な方に対して処方します。
めまいといえば、メニエール症候群や低血圧が近づくと起こるめまいなどがありますが、メニエールの場合は原因が、内耳の水分代謝の異常により、三半規管に影響を及ぼして起こすことと分かっています。
水分代謝の異常は漢方では、体内の水の巡りが悪くなる水毒が原因です。水分代謝を改善することは、めまいを改善することにも有効となります。
水が正常に巡るようになるためには、気・血のバランスも大切です。そのためには、消化器官である胃腸も強くしなければいけません。「半夏白朮天麻湯」に含まれる生薬の人参が「補気薬」となり、陳皮が「理気薬」となり食べ物からエネルギー取り入れて、取り入れた栄養を効率よく取り入れて、気・血となり体に取り入れて体内を巡らせて気・血・水のバランスを正常にします。
水分が停滞することは、身体の冷えに繋がり、冷えは水分が停滞するという悪循環になります。「半夏白朮天麻湯」に含まれる身体を温める生薬は、冷えの改善にもつながります。水分代謝の改善は大切なことなのです。
消化器官の働きを高めて、胃腸機能の低下を改善させて余分な湿気を排出して、肝の機能を鎮めて、めまいやふらつきを抑えたうえに生薬の体質に対する作用が、めまいの根本的な回復を助けます。
頭痛
「半夏白朮天麻湯」は、胃腸が虚弱で下肢が冷える方の頭痛やめまいを改善するために使用されますが、半夏に悪心や嘔吐を抑える働きがあるので、頭痛やめまいだけではなくて、頭痛からくる吐き気にも有効です。天麻の働きで、めまいや頭痛を直接発散して治す働きがあります。
「半夏白朮天麻湯」は、急性の症状と慢性的な症状の両方に効果を期待できますが、体質や症状に合わせて処方を選んでください。
日常的に生じる片頭痛、寒気がひどい方の偏頭痛やめまいには「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」の方が適しています。体質や症状によって薬を選ばなければいけません。
足のツボ
足にも痛みなどの効くツボがあります。
崑崙(こんろん)
くるぶしの外側とアキレス腱の間にあるくぼみです。頭痛、めまい、吐き気、腰痛、足のむくみなどに有効です。
足臨泣(あしりんきゅう)
小指と薬指の骨が合流するところです。頭痛、首や肩のこり、月経不順などに有効です。