不妊の原因は女性だけ、男性だけではなく両方にあることもあります。不妊の原因もさまざまで、長い間治療を受けていてもなかなか妊娠に至らない方もおられます。妊娠しやすい体作り、食生活や生活改善なども不妊対策や不妊治療にかかすことはできません。
妊娠に至るまでのプロセスが複雑なことから、不妊の原因を見つけて一つずつ取り除く治療を重ねても、根本的な原因がわからず不明な場合も多くあります。原因の分からない不妊症は難しいこともあります。
不妊症の原因が女性側だと考えられるのは約5割です。男性側が原因である場合は約3割で、原因不明が約2割といわれています。どういった要因が不妊につながるのかも男女それぞれ違い複雑であることは間違いありません。
< 男性が原因のケース >
男性の不妊症の原因は、精子の数が少なかったり、元気がなかったりする場合です。まれに無精子症のこともあります。
そして男性不妊の原因は以下の4つがあげられます。
①造精機能障害
②精路通過障害
③性機能障害
④副性器障害
このうち男性不妊の多くは、①の造精機能障害が原因です。これは突発性、精索静脈瘤、染色体異常などのことですが、原因は不明なことが多いです。
< 女性が原因のケース >
女性の不妊症の原因の場合は、器質性不妊と、原因が不明の機能性不妊の2つに分けられます。
原因が明らかな場合は、以下の4つに分けられます。
①排卵因子
②卵管因子
③子宮因子
④頸管因子
もっとも多いのは原因不明な機能性不妊の不妊で、次に卵管因子、排卵因子の順になります。
排卵因子
妊娠するには、卵子でき、卵巣から排卵されなければいけません。排卵に不具合があると不妊症となります。基礎体温を記録して低温期と高温期の2相となっている場合は、月経周期が正常で排卵がきちんと行われています。排卵していれば、女性ホルモンの分泌で子宮内膜も妊娠に備えて準備が始まり、妊娠しなければ、子宮内膜が剥がれて月経がはじまります。
月経不順の場合、排卵が伴わない出血があったり、ホルモンの分泌異常であったりします。まれに早発性卵巣不全の可能性もあります。基礎体温を記録していると排卵しているかどうか分かります。
排卵因子が原因の不妊の場合は、過度なダイエット、極度な肥満、ストレス、甲状腺・乳腺などホルモンを分泌する機能の異常でおこる、甲状腺機能の異常・高プロラクチン血症、男性ホルモンが高くなるホルモンのバランス異常である多嚢胞性卵巣症候群、喫煙なども影響していると言われています。
いずれも原因となる疾患を治療して、排卵を起こすようにします。排卵がなければ妊娠は成立しません。
卵管因子
卵管は精子が卵子に向かう通り道です。精子と卵子が出合い受精した胚も子宮に戻るために、卵管が蠕動運動で運びます。卵管が閉塞していたり、卵管の周りが癒着していた場合などは自然に妊娠することができません。
この卵管因子が原因である卵管の異常が不妊の中でも約35パーセントと最も多いと言われています。卵管が閉塞したり癒着したりしてしまう原因は、骨盤内感染症や子宮内膜症などありますが、原因は性感染症のひとつであるクラミジアである可能性が高く、近年増加傾向にあります。
卵管が閉塞して詰まっていても、ほとんどが無症状なので自覚することは少ないでしょう。強い月経痛がある場合、子宮内膜症も否定できません。子宮内膜症とは、子宮に似た組織が子宮以外の所に存在する疾患です。この病変によって卵管周囲の癒着や卵管が詰まっていることもあります。
子宮因子
卵子と精子がめぐり逢い、無事に受精して受精卵が卵管に運ばれ、子宮に到着したとしても子宮内膜にもぐりこむ必要があります。着床と言いますが、子宮内膜が薄かったり、子宮筋腫などの形態異常が原因で子宮内膜の血流が悪かったりすると、うまく受精卵が着床できずに妊娠の成立に至りません。
子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮内膜炎、子宮腺筋症などが原因で精子と卵子の出会いを妨げることもあります。まれに産まれつき子宮が変形している場合には、流産を繰り返すこともあり不妊となることもあります。
頚管因子
頸管とは子宮の出口で子宮とつながる細い管状の部分で、精子が入っていく入り口にもなります。精子が通りやすいように排卵期が近づくと、透明な粘液である頸管粘液が増えてきます。この粘液が少ないと精子が通りにくくなるため、精子が卵管までたどりつく以前の問題になります。
粘液量が不足、粘稠度が増加、粘液産生不全など原因が考えられますが、内分泌異常でエストロゲン作用の不足や、頸管炎、頸管ポリープ、頸管狭窄などが関係します。
いずれも精子が卵子と出会うチャンスがなくない不妊の原因のひとつです。
免疫因子
人には細菌やウィルスと戦う免疫という働きがあります。これは本来自分の身を外敵から守るシステムですが、まれに精子を異物とみなして、受け入れず攻撃してしまう抗精子抗体という抗体を持つ女性がいます。この抗体は、頸管粘液や卵管内などにも含まれて、入ってきた精子を攻撃して精子の運動を妨げるので卵子にたどり着かずに妊娠することができません。
免疫因子のお話は下記のページにも詳しく書いていますので参考にしてください。
機能性不妊で問題になるのは、加齢によって起こる卵子の質の低下があります。
年齢因子
年齢を重ねると子宮筋腫や子宮内膜症などの罹患率があがります。加齢による身体の衰えは、卵子や子宮も例外ではありません。特に卵子の老化は、昨今よく耳にすることもあると思いますが、35歳以上になると質も数も急激に下がります。
仮に生殖補助医療(体外受精・胚移植)の助けで妊娠が成立したとしても、妊娠率は低下しますし、流産率も増加しています。
女性と出産数の変化を研究して調べた結果がありますが、30歳から徐々に減少して、35歳を過ぎるとその傾向は顕著で、40歳を過ぎると急速に減少していきます。
平均寿命が伸びて、衛生面や栄養面が改善されても女性の年齢による出産数の低下には、変化がないということです。