自然に妊娠が成立するにはどのようなメカニズムが働いているのでしょうか?
不妊治療をはじめるにあたり、妊娠のしくみを知ることは重要です。妊娠するためには妊娠の仕組みを知って、自分は何が原因でつまずいているのかを知ることで、対処の仕方がわかります。
妊娠の成立は、まず排卵して受精、受精卵が分割して着床というステップをふまなければいけません。このステップのどこかに問題があれば妊娠に至らないことになります。
排卵
女性の卵巣には、原始卵胞と呼ばれる卵胞が多く存在しています。卵胞期には、この原始卵胞の15~20個が下垂体前葉から分泌されるFSHと呼ばれる卵胞刺激ホルモンの働きによって成長していきます。
普通はその中の成熟した1つの卵子が卵胞の袋を破り、卵巣の外に飛び出し、これを排卵と呼びます。
月経周期が28日型であれば、排卵は14日目あたりになると起こります。飛び出した卵子は、卵管采と呼ばれる卵管先端部にある手のような形をしたものに取り込まれて、卵管内に移動して卵管膨大部を通り子宮へと向かいます。
卵子自体は動かず、卵管内に生えている線毛の上に乗り蠕動運動で運ばれます。排卵が近づくと、頸管粘液が分泌されて精子を受け入れやすい状態になります。
射精
受精するためには精子が必要です。一度のセックスで射精される精子の数は、約5千~1億個です。精子の形はよくオタマジャクシに例えられます。
射精により膣内に入った精子は、尾の部分を動かしながら膣を通り子宮に入り、卵管を通り卵管膨大部まで進みます。この時間は、約1~2時間後になります。
卵管膨大部までたどりつくことができるのは、生命力が強い選ばれた精子です。
女性の中に入った精子の寿命は、約3日ほどで長い場合は1週間も生きている場合もあります。
受精
卵管膨大部に進んだ卵子は、射精により入り込んだ精子を待ち構えていて、受精しようとチャンスを待っています。
卵子の中に入り込んだ一つの精子と受精すると受精卵となります。
着床
受精卵は細胞分裂をくり返しながら、卵管を通って数日後に子宮まで進みます。
子宮内膜は月経が終わると受精卵の着床に備えて、増殖を開始して厚みを増しています。受精後の5~7日目ごろに子宮内膜に潜り込みます。
受精卵は細胞分裂が進み、排卵から約5日目に胚盤胞という状態になります。
排卵から7日目に胚盤胞は子宮内膜に潜り込み着床します。この着床をもって妊娠が成立になります。
妊娠にはタイミングが大切
妊娠が成立するためには、排卵→射精→受精→分割→着床とプロセスがあり、1つでも欠けると妊娠できません。
このプロセスのどこにトラブルがあるかを発見して、その原因に即して治療を進めます。
- 精子が元気でたくさんいること。(男性側)
- 精子を膣内に射精することができる。(男性側)
- 精子が頸管粘液を通り、子宮内に進入することができる。(男性・女性)
- 排卵している。(女性側)
- 卵子を卵管内にとりこむことができる。(女性側)
- 卵子と精子が、卵管内受精することができる。(男性・女性)
- 受精卵が卵管内を通り、子宮内膜に着床する。(女性側)
精子にも卵子にも寿命があるので、受精にはタイミングが大切です。精子の受精能力は、限度時間が40~72時間強といわれ、卵子の寿命は数時間から2日ほどといわれています。
排卵に合わせ、タイミングよく精子がとめぐり逢い、受精しなければいけません。受精すると、卵子の表面は硬化し、ほかの精子を入れないようにシャットアウトします。