精液を調整する

子宮内受精で使用する精子は、運動精子の数が多く元気な精子であれば、妊娠の成立が高まります。

子宮内授精で子宮内に注入する精子の量は約0.3~0.5mlです。採取した精液をそのまま注入するわけではありません。

お持ち頂いた精子の中から状態の良い元気な精子を選びます。元気な精子を選ぶことは、子宮内授精の成功率が上がると同時に、精子に含まれる子宮を刺激するプラスタグランジン(子宮を収縮させるホルモン)や雑菌などを取り除くこともできることからも推奨できます。

良好で元気な精子は重いという性質があります。そのため、比重の高い液体と一緒に精液を遠心分離することで、状態の良い精子を集めて子宮内授精の成功の確立をあげる事ができます。

採取する方法

精液の採取には、マスターベーションが基本です。局部を洗い、消毒された綺麗な無菌の容器をお渡ししますので、その中に精液の全量、数回に分けて射精される精液を入れて頂きます。

採取した直後の精液は、ゼリー状に固まっています。子宮内授精に使う精子は液化したサラサラの状態の精子ですから、しばらく管理した状態で液化させます。

精液の状態によっては、培養液を加えるなどもします。

元気で良好な精子の回収

元気な精子を濃縮し回収します。その際に、前立腺液や白血球や細菌などの不要物を除きます。

元気な精子を選別することで受精する確率が上がると考えられていて、できるだけ良好な精子を回収します。

受精しやすい精子は、子宮内腔から卵管膨大部まで自力で元気に泳いで到達することができる運動良好な精子であることには違いありません。

精子の調整法は、2つの方法があります。当院では精子の所見により良い方法を用いて元気な精子を選別しています。

スイムアップ(Swim up)法

精液を室温にしばらく置いておくと液化しますので、当院でお預かりした精液をサラサラの状態になるのを確認します。

液化しにくい場合は、培養液などで液化させて、濃縮し洗浄します。不純物があれば取り除き、フィルターなどを通して精液を綺麗にします。

培養液を加えた精液をシリンジの中で30分間斜め30度、その後シリンジを直立にして5分間待ちます。その状態で浮き上がる元気な精子を回収します。

培養液の中で浮遊しえきた精子を回収することで、良質な精子のみを選別することができます。精子自身の泳いで浮かび上がってくる力を利用する方法です。

スイムアップ(Swim up)法は、精子の中でも過酷な状況を乗り越えなければいけないので、奇形のある精子などもここである程度選別されることになります。

密度勾配遠心法

密度勾配といい、物質や細胞が遠心力を受けて速度差により沈降する性質を利用して分離する方法です。浸透圧をあげることなく効率よく精子を濃縮できます。

パーコール(Percoll)液と言い、遠心分離に効率的な密度勾配を作成するための試薬を使います。

精液とパーコール液を混ぜて遠心分離機にかけます。一番下に沈殿する元気で良質な生存している精子を回収します。

スイムアップ法か密度勾配遠心法を選ぶかは、回収した精子の所見により変わります。密度勾配遠心法は処理時間が短いのですが、スイムアップ法に比べると良質な精子の回収率が若干悪い傾向があります。

当院ではほとんどが、スイムアップ(Swim up)法を用いています。そのため、子宮内授精を施行する1時間前には、パートナーの精液をお持ち頂く必要があります。

子宮内授精は、様々な事情のあるカップルが直接調整した男性の精液を女性の子宮内に注入する方法です。女性の子宮内に注入するため、無菌で採取されることが望ましいです。

精液を採取するとき、精液を汚染しないように全量を採取して、お持ちの際は保温に注意して、身につけて人肌であたためてご持参くださいますようお願い申し上げます。

不安や疑問がおありの場合は、お気軽に医師やスタッフにご相談下さい。