桂枝茯苓丸

「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)には、桂皮(ケイヒ)、桃仁(トウニン)、牡丹皮(ボタンピ)、芍薬(シャクヤク)茯苓(ブクリョウ)、の5種類の生薬が入っています。

桂枝:血液を温めて循環をよくする作用と発散作用があります。

桃仁:血のめぐりをよくする作用に加えて、腸を潤す働きもあります。

牡丹皮:清熱涼血作用があります。血行をよくする作用もあり、冷え症や凝りによる痛みに効果があります。 血液の循環がよくなり徐々に体質が変わります。

芍薬:牡丹皮と同じように血行の調整に役立ちます。

茯苓:身体の中の水分の調整をします。

漢方では「証」を見極めることが大切

漢方では人の身体の体質を「証」で見立てて、その方にあった処方をお出しします。「証」というのは、大まかに「虚証」「実証」とあります。

「虚証」は、やせ型か水太りで皮膚の色つやも悪くて、脈も弱く下痢をしやすいなど、疲れやすい、食欲がないなどであまり体力のない方です。

「実証」は「虚証」とは反対でがっちりした体格の皮膚の色つやもよくて、食欲旺盛で、積極的なタイプで、どちらかというと便秘しやすい方です。

「虚証」でも「実証」でもない「中間証」の丁度よいタイプの方もいます。

その他にも「陰証」や「陽証」、「気・血・水」など漢方では、様々な方法で体質を見極めて、その方にあった処方を決めます。

漢方でいう「瘀血 」とはどのような状態か?

漢方には、西洋にはない「瘀血」と呼ばれる独特な考え方がありますが、さらさらと流れる正常な血液ではなくて、粘りのある粘度のある血液の状態にある場合を言います。

手足は、冷えるのに、顔から汗ダラダラと流れて、真っ赤な顔で耳がキ〜ンとなるような方は、冷えのぼせ又はホットフラッシュとも呼ばれる症状ですが、漢方では気逆という症状になり、このような症状も「瘀血」が原因とされています。

「瘀血」とは、身体全体に血液が循環しない状態です。この「瘀血」と呼ばれる状態を改善してくれるのが、牡丹皮と桃仁で、体力のある「中間証」から「実証」タイプの方には「桂枝茯苓丸」がおすすめです。

エビデンスとして、桂枝茯苓丸には血液凝固抑制作用、抗炎症作用などの効果も確認されています。よく生理痛のひどい方で、生理の時に塊りで出血するという方がおられます。

そのような方が桂枝茯苓丸を服用することで、生理痛がましになると同時に、血液に混じる塊りが無くなったとおっしゃる方が多いです。

月経困難症、子宮内膜炎や、打撲によってすぐに紫色のあざになってしまう方にも効果があります。血行をよくするので、血流が悪くなる肩こりにも処方します。

その他、女性には美容にも効果が期待できるということで、シミや肌荒れにも処方します。月経困難症だけではなくて、身体全体の血液循環を改善することができるのですから当然ですね。

男性にも炎症に使う漢方として、打ち身や打撲などのときに処方されます。

古くから使われている生薬

桃仁は桃の中にある種子の中にある核の白い部分のことです。この桃仁も古くから、咳止めや婦人病の治療に使われてきました。桃仁に含まれる、青酸配糖体(アミクダリン)という成分が、血液の粘度を治す作用が認められています。一般に食用されている食用の桃は種が成熟せずに薬用には適しません。

食用の桃の果実は食物繊維が豊富で、ペクチンも多く整腸作用により便秘に効果があります。花を乾燥させると「白桃花」と呼ばれ、緩下剤として使われます。葉にはタンニンやフラボンが豊富で、消炎や抗菌作用があり、乾燥させてお風呂に入れるとあせもなどに効果があります。

桃の漢字の語源は、「妊娠の兆しを示す果実」という意味があるとも言われていて、懐妊を願う人々に占術として用いられたこともあり「仙人の果実」として、昔から重宝されていたようです。

桂枝は、シナモンパイやシナモンロールなどのお菓子に使うスパイスのシナモンと同じです。桂枝と書きますが、実際に生薬として使われるのは、桂皮になります。古くから世界の医薬書にも記されていて、薬や香料として利用されてきました。エジプトなどでは、ミイラを作る時にも用いられていたようです。

牡丹皮は 当帰芍薬散のお話で説明したように、漢方でいう「 瘀血 」を牡丹皮が改善します。 牡丹皮は根っこを包む外皮を使うので、牡丹皮(ぼたんぴ)といいます。

茯苓は、松のなどの根に寄生するキノコ類の菌核を原料 として成長します。水の流れをよくする働きがあるので、 桂枝・牡丹皮・桃仁 の血の流れをよくする働きと合わさることで、 「桂枝茯苓丸」は 体液の循環が改善 するが働きが大いに期待できる処方となります。 しばらく続けて飲んで頂きたいと思います。