補中益気湯

黄耆(オウギ)、人参(ニンジ)、白朮又は蒼朮(ビャクジュツ、ソウジュツ)、甘草(カンゾウ)、当帰(トウキ)、 大棗 (タイソウ)、陳皮(チンピ)、升麻(ショウマ)、柴胡(サイコ)、生姜(ショウキョウ)の10の生薬で構成されています。

黄耆や人参:体力や気力を補い、免疫力を高めます。

白朮:黄耆や人参と合わせて、白朮がさらにこの効果を助けます。

甘草:健胃、強壮作用があり、各生薬のバランスをとる役目もあります。

当帰:血の働きを補う事が出来、補中益気湯の効果の持続性が高まります。

陳皮:横隔膜の上下の気の流れを良くします。

柴胡や柴胡:取り込んだ気を高めて精神的に気力をアップさせます。

大棗:脾胃(ひい)の働きを高め、生薬どうしの薬理作用の衝突を防ぐ作用があります。

生姜:体を温め、健胃作用、嘔吐を鎮める作用があります。

弱った身体に働きかける

「補中益気湯」は胃腸の働きが弱い方や病後などで体力を消耗した方、疲れがたまり慢性疲労に陥った方など、虚弱な体質の方に処方されます。また、夏の暑さにより夏ばてや夏痩せをしてしまう方にも効果があります。

胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、多汗症などにも効き目があるのですが、これは「補中益気湯」には、落ちた気(エネルギー)を上へ持ち上げる作用があるからです。

胃下垂や痔、子宮下垂なども原因が、お腹の気が下に下がった状態ととらえて、本来のあるべき位置に戻してあげようとする作用を期待して服用するのです。切迫流早産の流産予防に有効な場合もありますが、妊婦さんには慎重に投与します。

胃腸を丈夫にする!

「補中益気湯」の漢方名には、体の真ん中の気を益すという意味があります。体の真ん中はお腹で、消化器官の働きと考えます。漢方では「脾」」とも表現します。
消化器官は食べたものを食べて、消化し、栄養を吸収する働きを担いますが、この働きが低下すると食べ物を受け付けなくなり、食欲不振となります。無理に食べても吸収することができずに、消化不良をおこしてしまいます。

そして、栄養が不足して、生きて活動するエネルギー(気)も不足してしまい、抵抗力も落ちて疲れやす、虚弱な体質へとなってしまうのです。

それから、消化器官は冷えると働きが悪くなるので、適度に温める必要がありますが、「気」が不足すると温める力が鈍ります。「補中益気湯」には温める作用もとても強くあります。

胃に入った食べ物は、いったん胃にため込み腸へ送ります。この場合、胃の「気」は下へ向かうのが普通です。しかし、この気が反対の方向に向いてしまうと嘔吐となります。

また、重力で、各臓器は常に下へ引っ張られている状態ですが、各臓器を適正な位置に留めておくために、必要な筋肉を維持するためにも多くのエネルギー(気)が必要です。

消化器系の働きが落ちると、栄養がうまく吸収できなく不足してしまうので、筋肉が痩せてきたり、エネルギーも十分作り出せなくなるのです。

「補中益気湯」に不向きな人

元気が足りないときに用いる処方なので、強壮な人、体力のある人には不向きです。なお、疲労時の発熱には適しますが、風邪によるゾクゾクっとする寒さや悪寒にも使いません。

実証の体質で活動的な人や、急性の炎症がある場合には不向きでのぼせの症状がでたり、炎症の悪化をまねきます。「陰・虚証」向きの方の処方だということで、「陽・実証」の方にはマイナスになることもあるのです。

男性不妊に処方される漢方

「補中益気湯」は、 李東垣(りとうえん) という中国の名医によって作られ、弱った身体のさまざまな症状が回復することから、別名「医王湯(いおうとう)と呼ばれて、幅広い症状に古くから処方されてきました。

男性不妊にも効果が認められていて、胃腸虚弱からくる、精液が不足している症状などに「補中益気湯」を処方します。

気力が減退している、性欲減退や勃起不全には「八味地黄丸」、精神的なストレスによる勃起不全や早漏は「柴胡加竜骨牡蛎湯」と処方も違がうので、ご相談ください。