八味地黄丸

八味地黄丸(ハチミジオウガン)は、地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュ)、山薬(サンヤク)、茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、牡丹皮(ボタンピ)、桂皮(ケイヒ)、附子(ブシ)の8つの生薬からできています。

地黄:止血、滋陰、補血、強壮の作用があります。

山茱萸:肝や腎を補い、固精、止汗足腰の痛み、眩暈、尿に関する頻尿、夜尿症、性機能の低下などに効果があります。

山薬:脾や胃や腎を補う作用があり、下痢、せき、胃腸の衰弱、体力の低下した方に用いられます。

茯苓:利水、作用があり、食欲不振、消化不良、動悸、不眠、むくみなに有効です。

沢瀉:利水、清熱の作用があるので、むくみ、口渇、めまい、排尿障害などに用いられます。

牡丹皮:活血、清熱などの作用があり、吐血や下血、月経不順、鼻血などにも用いられます。

桂枝:血行を良くして、手足の冷えを防ぎます。

附子:体を温めて、力を高めるます。冷えの改善、止痛などの作用があり、身体の冷えなどに有効です。

徳川家康の愛した漢方

「八味地黄丸」は、戦国武将である徳川家康がこよなく愛したと言われている処方です。徳川家康は「八味地黄丸」の8つの生薬に「海狗腎(かいくじん)」を加えて、自ら調合し、いつも薬の棚の上から数えて8番目の引き出しに入れて「八の字」と呼び、この薬を常備していたという記録が残っているようです。

「海狗腎(かいくじん)」は、オットセイの陰茎や睾丸で、「カロペプタイド」という成分が含まれていて、「カロペプタイド」は、18種類ものアミノ酸が含まれていて、当時は滋養強壮剤として使用されていました。徳川家康独自の処方で、現在の八味地黄丸には含まれていません。

徳川家康は、みずから薬を煎じて処方していたそうですから、健康にはよほど気を配っていたのでしょう。

徳川家康は、子どもの頃は人質になるなど、戦国時代に苦労をして育ちますが、この時代には珍しく、73歳という長命であり、65歳のときには、16人目の子どもまで授かったのです。健康で存分に人生を楽しんだのでしょう。健康で精力的な徳川家康の秘密は、この「八味地黄丸」のおかげかも知れません。

不老長寿を夢見て!

もともと「八味地黄丸」は、不老長寿を目的として、中国では作られたようです。弱った「腎」を強化するためで、腎炎、糖尿病、高血圧、腰痛、排尿障害、頻尿、耳鳴り、老人のかすみ目、老人性皮膚掻痒症、陰萎など「腎虚」による症状を改善する目的があるのです。

疲れやすい方で、夜間の頻尿などの下半身の悩みに処方し、若い方よりも年配の方向けになります。高齢になり、気や血、水の不足に処方し、むくみや冷えにも有効です。身体を温め、本来の身体の機能を戻し、弱った機能を元気にするために用います。

「腎虚」といっても漢方では、腎臓を指すわけではなく、人が生きていくエネルギーの不足した状態をいいます。お年を召し、髪に白いものが混じり、耳が遠くなる、老眼が始まるなど年を重ねると、若い頃のようなわけにはいきません。

高齢ではなくても、ストレスや疲れからエネルギー不足になることもあります。そんなときに、補剤として八味地黄丸を利用すると良いかと思います。男性の不妊治療にも効果が期待できて、テストステロン増加や精子を作る機能を改善させるとも言われています。