葛根湯

葛根湯(かっこんとう)

葛根(カッコン)、生姜(ショウキョウ)桂皮(シナモン)、大棗(ナツメ)、麻黄(マオウ)、芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)の7種類の生薬が入っています。

葛根:身体の熱を発散させて、血流をよくします。

生姜:身体を温めます。

桂皮:身体を温めて血液の循環を良くします

大棗:脾や胃の働きを高め、生薬どうしの効能を高めます。

麻黄:発汗、鎮咳、利水の効能があります。

芍薬:肩こりなど痛みを和らげます。また、血を補います。

甘草:健胃、強壮作用があり、各生薬のバランスをとる役目もあります。

風邪のひき始めに葛根湯

葛根湯は、風邪薬として有名な漢方薬です。中国の張仲景によって著された医書、傷寒論(しょうかんろん)や、金匱要略(きんきようりゃく)の中に紹介されている伝統ある風邪や肩こりなどを和らげる処方として伝わっています。

江戸時代の「葛根湯医者」落語噺をご存じでしょうか?

頭が痛ければ葛根湯、お腹が痛いとき葛根湯、病人に付き添って来た人にも葛根湯と、どんな人にも葛根湯ばかりを処方する医者のことを笑いにされたネタ話です。

葛根湯を使いどんな病気でも治してしまう名医、どんな症状にも葛根湯を処方して誤魔化す医者、いつも具合が悪く葛根湯を服用しながら仕事をしている不養生な医者、などと多くの意味をもって使われたようです。

それほど適応範囲が広く、葛根湯はよく効いたのでしょう。病気の症状を選ばずにいつもよく効くというわけで、歴史の古い伝統的な漢方薬というわけです。

葛根湯を飲むときの注意!

葛根湯には飲み方のコツがあり、飲み方を間違えると「あまり効かないな」ということになります。「風邪を引いたかな」と思った時点ですぐに服用しましょう。

温かいお湯で服用し、服用後は身体を冷やさないようにして温めます。洋服を多めに着込むなり、毛布に包まるなりして発汗を促すのです。ダラダラとかく汗ではなくて、額にうっすらとかくような汗が丁度よいでしょう。

血行を良くして、発汗を促し、代謝機能を高め老廃物を取り除くことが目的です。発汗するには体力が必要です。身体が弱った方や虚弱な体質の方には処方しません。

妊婦さんへの投与も注意が必要ですから、むやみに服用しないようにして下さい。妊婦さんには禁忌とされている[発汗・下痢・多尿]作用があります。

葛根湯に含まれる麻黄にはエフェドリンと呼ばれる成分が含まれています。エフェドリンには発汗作用があり、妊婦さんに無理に発汗させることが負担になったり、末梢の循環を損ない、胎盤への血流を妨げることになりかねないからです。

また、エフェドリンは交感神経を亢進させるので、アスリートが服用すると、薬物のドーピング検査で陽性になるため、スポーツをする方も安易に服用しない方がよいでしょう。

風邪以外にも使われる葛根湯

葛根湯に含まれる「葛」は、春の七草に対して、秋の七草のひとつである葛の根も含まれています。春の七草は、食べて季節を感じますが、秋の七草は、鑑賞用として愛でて楽しみます。

「葛」は、根を砕いて、デンプン質を取り出し和菓子などのとろみに使われています。特に「本葛」は貴重で高価ですが、発汗、鎮痛作用があることや消化も良いことから、風邪や胃腸の調子が悪いときに民間治療薬として重宝されてきました。

そんな「葛の根」が含まれている、葛根湯は肩こりにも効果があります。葛根湯の一番の効果は、体を温める事ですがこの効果で、血行が良くなり筋肉が柔らかくなり、緩められることで肩こりや首のこりにも効果が期待できます。

じんましんなどにも効果があるので使用されます。薬の効果を調べる実験では、抗アレルギー作用や抗インフルエンザ作用もきちんと確認されています。

葛根湯以外の風邪に効く漢方薬は?

葛根湯は、風邪は初期の頃に飲むことが大事で、寒気がなくすでに熱が出て、鼻水や咳の症状が出ている状態では、効き目を感じないことが多いです。胃腸が弱い方にも向かなく、葛根湯の証に合わない方や妊婦さんに処方する漢方もあります。

麻黄湯(マオウトウ)、麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)、真武湯(ブシントウ)、桂枝湯(ケイシトウ)、香蘇散(コウソサン)など別の処方がありますから、次回に紹介したいと思います。