小青龍湯(しょうせいりゅうとう)

半夏(ハンゲ)、麻黄(マオウ)、芍薬(シャクヤク)、乾姜(カンキョウ)、甘草(カンゾウ)、桂枝(ケイシ)、細辛(サイシン)、
五味子(ゴミシ)の8つの生薬で構成されています。

半夏:去痰、鎮吐、の効果があります。

麻黄:咳止めのほか発汗作用があります。

芍薬:血管の働きを順調にします。

乾姜:体をあたため、新陳代謝を良くします。

甘草:鎮痛、解毒、咳止めの効果があり他の生薬との調和をはかります。

桂枝:芳香性健胃薬として胃を元気にする効果や発熱を促して解熱、鎮痛効果があります。

細辛:体を温め、鎮痛・鎮静・抗菌作用もあります。

五味子:咳止め強壮効果があり体力の回復を早めます。

「小青竜湯」という名前の由来は、中国の五行説にある東西南北を守る四神の一つで、西方を守る白虎、南方を守る朱雀、北方を守る玄武、東方を守る青竜の神の名前からきています。五行説では東方の色は青で緑色植物の色を指すので、本来は緑がかった青で、青竜の青も緑色で、小青竜湯に含まれている「麻黄」の色から名づけられたと考えられています。

「小青竜湯」に含まれている乾姜と甘草の2つは、呼吸器系に対して強力に作用し、水のようなサラサラとした鼻汁が出る方に効き目があります。花粉症の症状である鼻がムズムズする、くしゃみが止まらないなどにも効果があります。

アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支炎、気管支喘息、風邪などに使われます。小青竜湯は体を温める作用に加えて、代謝を促し、「気」を動かして鼻水やくしゃみなどの症状を抑えます。

体を温める効果があるので、冷え証な方の体質改善にも使われることもあります。花粉症と風邪の症状は似ているものが多ため、どちらか判断できないときにも小青竜湯を服用してもいいでしょう。

竜湯に眠気の副作用はない

小青風邪や鼻炎に効果を発揮する「小青龍湯」ですが、最近の研究によって予防的な効果も期待できるということがわかってきました。
研究によると、アレルギー反応に関与するヒスタミンや、遅発性のアレルギー反応に関与する好酸球などの働きを抑制し、反復炎症化を抑える働きがあることがわかってきています。

花粉症でよく使われる抗ヒスタミン薬は、副作用として眠気が出ることがあり、飲むこと躊躇する方も多いでしょう。しかし、小青竜湯は、副作用に眠気はありません。花粉症の薬で眠気が出るものは使いたくない方にも重宝する処方になります。

妊娠中の漢方に漢方を処方するときの注意点

「小青竜湯」は、汗をかいて邪気を飛ばすという考えから、体力がある方に向けて処方します。妊婦さんや高齢の方、虚証の体質の方には向きません。

麻黄、大黄が入る漢方薬、瘀血剤として使われる血の巡りを良くする漢方薬は妊婦さんには禁忌とされています。この小青竜湯も葛根湯と同じく上記の「麻黄」が主成分です。

花粉症は、妊婦さんでも症状が辛いのは同じで、妊娠中にも処方される抗アレルギー剤もありますが、基本的に妊娠中や、特に初期はお薬を控えたい方も多いでしょう。

しかし、漢方薬には、安胎薬と言われて妊娠中でも安心して使える「当帰芍薬散」などもあります。「当帰芍薬散」は、血の巡りを改善する働きで、貧血を予防、水の巡りを改善することで、むくみやお腹の張りなどのトラブルに対処することができます。

どうしても妊娠中は、「気血水」の巡りが悪くなり、水毒も起こりやすくなっているのです。その中で、花粉症はたらたらと鼻水が流れる症状がありますが、漢方ではこのたらたらと流れる鼻水の症状を「水毒」と捉えて「当帰芍薬散」を勧めることもあるのです。

そして、身体を冷やさないようにして、水分や甘いものを控えることで胃腸に負担をかけずに、外に出るときはマスクをして、帰ってきたらうがい、手洗いを忘れないように予防もしっかりしましょう。

妊婦さん以外にも「小青竜湯」は、葛根湯と同じように含まれている麻黄のエフェドリンの影響で、スポーツ選手などドーピング検査がある場合は注意しなければいけません。

小青竜湯が効かない場合

眠くなる副作用がないために、使用されている方も多いですが、風邪や鼻炎が悪化してしまいサラサラした鼻水だけではなくて、粘性のある鼻水や鼻づまりなど、副鼻腔炎などを引き起こしている場合は効きません。症状が熱証になってしまっているので「小青竜湯」ではなく、「葛根湯加川芎辛夷(かっこんかせんきゅうしんい)」をおすすめします。

次回は、「葛根湯加川芎辛夷(かっこんかせんきゅうしんい)」についてお話します。