麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)

麻黄附子細辛湯は、麻黄(まおう)、附子(ぶし)、細辛(さいしん)の3つの生薬からできています。

麻黄:発汗、発散作用があります。

附子:身体を温めて痛みをやわらげる作用があり、細辛と合わせることでより効果を発揮します。

細辛:鎮静や鎮痛作用があります。

葛根湯と同様に、風邪の初期に良く効きます。体力がない方や年配の方にはおすすめする処方です。若くても体力がない方や、熱を出す体力がないといった方に向いています。くしゃみ、鼻水、寒気など、「風邪のひいたかなぁ」と思ったらすぐに服用しましょう。引き始めであれば、早ければ早いほど効果も早めに出ます。

若い方には葛根湯が良いかも知れませんが、年齢を重ねてきて体質の変化を感じて、葛根湯から麻黄附子細辛湯に処方を変えてみて、体調が良くなったという方もおられます。やはり、自分の体質や証を見極めることが大切でしょう。

どちらも、同じく早めの服用が大切になります。

「麻黄附子細辛湯」も名前に含まれる「麻黄」が含まれていて、エフェドリン類が交感神経を興奮させる作用があります。この作用は、喘息やゼイゼイとする咳を抑える働きがありますが、消化器や循環器系に基礎疾患がある場合は注意が必要です。このような方は「真武湯」が良いでしょう。

トリカブトは毒花⁈

附子はキンポウゲ科トリカブトで、日本では主にハナトリカブトまたはオクトリカブトが、北海道などの冷涼な地域で栽培されていて、茎の下にある母根の横から新しく出る、子根を附子と呼び、その附子を乾燥させたものを用います。

トリカブトと聞くと、トリカブト事件を想いだして、毒があると思い浮かべる方も多いと思います。毒性は強いのですが、花もきれいで観賞用としても有名です。もちろん漢方薬に使う場合は、減毒加工をして毒性を弱めているので、普通に服用する場合は何の問題もなく、毒性を弱めた附子の薬効は様々な症状に効き目があります。

人に害を与えるものが毒ですが、その毒も、副作用を十分に抑え、病気を治す力を与えうる量を使用することで薬に変わります。人により、薬となる量が適量を上回り毒となった場合は、副作用として現れます。

百日咳や破傷風などのワクチンも毒を弱毒化させて予防接種として利用していることも同じ原理です。毒であるか薬であるかの境界は、人がある目的の下で有益であれば薬となり、それ以外の悪い結果がでれば毒となるのでしょう。

附子のパワーで身体の内から元気になりましょう

附子には身体を温める作用が強くあるので、手足の強い冷えや、冷えから体調不良に陥った場合や身体が弱った方には、強力なパワーで身体に働きかけて、内部から立て直しを助けてくれます。

虚弱体質の方の腹痛や下痢、神経痛、関節痛、代謝機能の低下、遺精(性行為以外のときに無意識に精液が漏れる症状)などにも優れた効果を発揮します。附子を含む処方は他の生薬と組み合わさることで、効果や効能も違い、適応も変わってきます。

附子を主薬として処方した漢方を「附子剤」と呼び、「麻黄附子細辛湯」と以外にも「真武湯」「桂枝加朮附湯」「八味地黄丸」など新陳代謝を高め、血流を良くして、冷えなどの症状に合わせた処方があります。

附子の効能である利尿や鎮痛、鎮静、強心、身体を温める作用を利用して、自分にあった処方で身体の中から元気になるように症状にあった漢方を見つけるお手伝いができればと思っています。