麻黄湯(マオウトウ)

「麻黄湯」は、麻黄(マオウ)、桂枝(ケイヒ)、杏仁(アンニン)、甘草(カンゾウ)とシンプルに4つの生薬からできています。

麻黄:身体を温め、発汗させ、咳を鎮めます。

杏仁:咳や痰をとり、麻黄といっしょに合わせることで、呼吸機能を改善させます。

甘草:甘草は生薬どうしの薬効を緩和し、バランスを取ります。

桂枝:麻黄の発汗力を強め、血行を促進しながら、発汗が過多になるのを防止する働きもします。鎮痛作用も期待できます。

インフルエンザにも処方

インフルエンザにも「麻黄湯」はよく使われています。大人よりも子どもに処方されることが多く、高い熱で寒気を訴える方に向いているようです。子どもは大人より体温が高く、高熱になることから処方されることが多いのでしょう。

インフルエンザや風邪にかかって発熱するのは、体温を上昇させて身体の中でウイルスの増殖を防いで、治そうとする防衛反応です。熱が昇りきるまでゾクゾクと寒けがあり、次第に身体が温まると一定の体温に達して寒気がおさまります。そして、そこからさらに熱が上がると、じわじわと汗をかいて、熱が汗となり体温が下がって治癒に向かいます。

抗インフル薬のタミフルなどと麻黄湯と併用することで相乗効果があるとも言われていていますが「麻黄湯」は発汗が起こるまでで、発汗が起こればそこで中止としましょう。

「麻黄湯」を処方するポイント

強い悪寒や、発熱、頭痛、咳、などの症状のほかに「汗をかかない」ことを基準にします。汗が出る状態の感冒は、漢方では「虚証」のタイプと診るので、必要以上に汗が出ると、体力を消耗してしまうことになるのです。

発汗作用の強い「麻黄湯」は、普段から健康で体力の十分ある方で、インフルエンザの初期、頭痛、発熱、悪寒、腰痛、四肢の関節痛などあり、自然発汗のない場合に服用することがポイントです。

発汗がなく、ゾクゾクと寒気がして、これから熱が上がると考えるタイミングで服用しましょう。発汗していない時に使うと症状の改善が早く、発汗したあとに投与するのと比べると、回復する期間が少し長くなる傾向があると言われています。このことから、「麻黄湯」は発汗する前に服用したほうが良い結果が得られるようです。

「麻黄湯」に含まれる生薬である桂皮には、ウイルス感染に対して抑制効果を示すことが報告されています。桂皮と麻黄には、サイトカインの産生抑制の効果が確認されていることや、杏仁と甘草には免疫賦活作用があるとの報告もあります。エビデンスもしっかりと確認され処方なのです。

「麻黄湯」の服用に注意が必要な方は?

「麻黄湯」に含まれる麻黄は、胃腸に負担をかけるため、胃腸が弱い方や身体がひどく弱っている「虚」の方、発汗の多い方には向きません。胃もたれを起こすこともありますし「麻黄湯」の中に入っている杏仁には、緩下作用があるので下痢を起こすこともあります。

また、麻黄には、エフェドリン類が含まれていて、心臓や血管に負担をかけるので、高血圧や心臓病、脳卒中既往など、循環器系に病気のある人、 尿閉にも注意が必要です。

葛根湯と同じように、服用後は暖かい服装で、身体を冷やさないようにして、ねぎや生姜を入れた温かいうどんなど、消化の良い食事をとって早く休みましょう。水分補給を忘れずにぐっすりと眠ることで、体力も回復し早く風邪を撃退しましょう。