子宮内受精(IUI)とは?

以前は、配偶者間人工受精(AIH)(Artificial Insemination of Husband)と言い、夫婦間で行う人工受精で、技術的に確立されており、全く問題なく行われています。

最近は、子宮内受精(IUI)(Intra uterine fertilization)と呼ばれています。

意外と思われるかも知れませんが、人工受精の歴史は古く、1799年、イギリスの外科医、Hunter氏が最初に手掛けたとされています。

アメリカでは1884年に、1920年頃には精子バンクができ、非配偶者人工受精(AID)も試験的に運用された記録もあります。

日本では1948年に慶應義塾大学教授が最初だと言われていて、翌1949年の出産の報告があります。

この日本の事例は、配偶者の精子による人工受精(AIH)ではなくて、非配偶者である第三者の精子を用いての人工受精(AID)によるものです。

この頃は、非配偶者による人工受精(AID)について倫理的、法律的に議論が盛んだったことは記憶にあるのではないでしょうか?

現在のほとんどが配偶者の精子による人工受精ですが、どうしても身体的になんらかの原因があり、非配偶者の精子を使ったAIDに頼らなければならない事例もあります。

人工受精の種類

人工受精には種類があり、精子を注入する場所によって呼び方が違います。

  • 精子を子宮腔内に注入→子宮腔内人工受精(IUI)
  • 精子を子宮頸管に注入→子宮頸管内人工受精(ICI)
  • 精子を卵管内に注入→卵管内人工受精(FSP)
  • 腟の方から腹腔内(ダグラス窩)に精子を注入→腹腔内人工受精(DIPI)

などがありますが、受精が行われる卵管膨大部に近いほど、妊娠率が高いと考えられていることから、現在の主流はIUIとも呼ばれる子宮内人工受精で精子を子宮腔内に注入する方法です。

子宮内受精の意味

普通の夫婦生活(性交)では、射精された精子が女性の膣から頸管粘液を通り子宮内に入り、自力で卵管内を泳いで卵子のいるところに移動して受精に臨みます。

子宮内受精は卵管の膨大部に、受精に必要なだけの十分な精子を届けることにより受精率、妊娠率が上がり妊娠の成立を助けます。精子を子宮の中まで注入することから、精子の負担が少なくなります。

以前は、採取した精液はそのまま注入していましたが、現在は、採取した精子を調整して活性の高い精子を選んで注入することで効率が向上しています。

排卵の時期に合わせてタイミングをしっかり合わせて行うことで妊娠率が上がります。

人工受精という呼び名は、人工的に思うでしょうが、実際は子宮内受精(IUI)ですから、自然な妊娠よりも受精の場に、近い所に優れた精子を注入するという方法を取るだけで、自然妊娠に近いといえます。

子宮内に精子を注入するまでは医師の手を借りますが、精子が子宮内に入ってからは、一番優れた精子が卵にの内部に侵入するという自然妊娠と全く変わりがありません。

赤ちゃんへの影響もなく、副作用の心配もほとんどなく自然妊娠やタイミング療法に近い方法での妊娠となります。

子宮内受精で気を付けること

ほとんど痛みもなく身体的な負担が少ない治療法で、妊娠率もある程度高い治療法ですが、気を付けることもあります。

★保険適用ではなく、自由診療なります。よって費用が少し高くなります。

★自然な妊娠と違い、気を付けなければいけないこともあります。

出血

子宮内受精には、細い柔らかい器具を挿入して精子調整液を挿入します。その刺激でまれに、子宮入り口のびらん(粘膜炎のただれ)部分からごく少量の出血のあることがあります。

感染

通常の性生活では、子宮頸管がバリアとなり細菌が直接子宮内へ入ることはありません。子宮内受精は、清潔に滅菌した器具を使用しますが、まれに身体の抵抗力が落ちているような時には、炎症が起こることはあります。

子宮頸管を通過して直接子宮内に無菌でない精液を注入するので、まれに子宮や卵管など腹腔内に感染の感染が認められることがあります。

そのため予防の意味で、当院では数日、抗生剤を服用して頂いています。お薬にアレルギー(じんましんなど)のある方は、事前に確認し使用できるお薬をお出しします。

もともと膣内に存在する細菌の影響もありますが、子宮内膜症やクラミジア感染の既往のある方は多少リスクがあります。

多胎妊娠

子宮内受精(IUI)が多胎の原因になるのではありません。経口排卵誘発剤が無効で、注射薬を使用した場合は、どうしても多胎妊娠の可能性が高まります。

セキソビットやクロミッドなどによる経口薬剤での多胎妊娠の可能性は低いのですが、ゴナドトロピン製剤(hMG/rFSHなど)では、多胎妊娠の可能性が高くなる傾向があります。

多胎妊娠は単胎妊娠よりも身体的、経済的に負担も大きいです。可能であれば避けるべき妊娠だと医学的には言えます。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

排卵誘発剤を使うとどうしても、多数の卵胞が発育してしまうことが多いようです。そのため、卵巣が腫れるなどの副作用が現れる場合があります。

卵巣が腫大すると、腹水の貯留のため、腹痛や腹部膨満感などもおこり、まれに血液濃縮、乏尿、血栓症なども報告されています。

腫大しやすい方は日常診療上、把握しておりますので、実際当院では起こることはほとんどありません。

子宮内受精の成績と施行回数について

1度目の子宮内受精での妊娠率は、それほど高くなく5~10%となっています。4周期以上挑戦して、やっと80%程に上がるのですが年齢によって結果に差があることも事実です。

40歳以上の方が2~3回続けても妊娠しない場合や、30代の方でも、6回以上続けても妊娠しない場合はそれ以上続けても妊娠の確立が少ないかも知れません。

子宮内受精をある程度続けても妊娠が成立しない場合は、不妊の原因がどこか他にあると考えます。卵子の質の低下、卵管采や卵管に障害がある場合などの可能性を考えます。

5~6周期子宮内受精に挑戦しても妊娠しない場合は、体外受精や原疾患(内膜症や筋腫)の治療など次のステップに進むことを考えましょう。

子宮内受精と体外受精の違い

少し言葉が似ていますが、子宮内受精と体外受精は違います。子宮内受精(体内受精)は上記で説明したように、精子を洗浄して元気な精子を子宮内に注入してご自分たちの力で受精(体内受精)する方法です。

体外受精(IVF)とは?

体外受精は、女性から卵子を体外に取り出します。その採卵した卵子と男性から採取した精子を預かり、身体の外で培養し受精させます(体外受精)。そして、その胚を子宮内に戻す方法です。

子宮内受精より費用も高く、身体への負担もやや重いです。しかし、子宮内授精で赤ちゃんが授からない場合や、タイミング療法、子宮内受精からのステップアップの治療法として高度な医療技術として確立されています。

不妊の原因は人それぞれ違います。年齢や病態などがお一人お一人の患者様にあった方法・検査で治療を進めていきたいと考えています。

まずは、当院にご相談くだされば丁寧にお話を聞かせて頂き、患者様にあった方法での治療法をおすすめします。

お気軽にご相談ください。