子宮頸がんとHPVワクチンについて

子宮頸がんは比較的若い年齢層で見つかり、患者数も年々増加傾向にあります。

子宮頸がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)が子宮頚部に感染することで発症します。

感染経路は、ほとんどが性生活から感染すると見られることから、性交渉の経験があれば誰もが感染のリスクがあると考えられて、ほとんどの人が感染しているといってもいいでしょう。

その中の一部の女性が、子宮頸がんを発症することになります。

子宮頸がんとは?

HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染したからと言って、すべての女性が子宮頸がんを発症するわけではありません。感染した一部の女性の、感染した細胞が異形細胞となり、前がん病変を引き起こし、その中の一部が高度前がん病変へと進行していきます。

一般的に異形成が起こっていても自覚症状はありません。子宮頸がん検診で発見できるのですが、検診を受けていないと気づかないうちに進行して、前がん病変から浸潤がんに進行している場合があります。

HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染して子宮頸がんが進行するまでは、数年から数十年かかると考えられています。

早期発見の初期のがんであれば、子宮頚部円錐切除術で子宮を残すことも可能ですが、流産や早産のリスクや、出産に影響を及ぼす可能性もあります。

浸潤したがんでは、子宮や卵巣の摘出を余儀なくされて、妊娠することが難しくなったり、排尿に支障をきたしたり、ホルモンの不足による症状に悩まされたりと後遺症も残ります。

HPV(ヒトパピローマウイルス)には、種類が多くあり、ウィルスの種類によって病型が違います。

子宮頸がんを引き起こし、進行が早いと言われていてリスクが高いのは、HPV16型、HPV18型になります。HPV6型、11型は尖圭コンジローマに関連する型ですが、発がん性が低くローリスクと言われています。

HPVワクチン

HPVワクチンは、HPV16型、HPV18型のウィルスの感染を防ぎます。

子宮頸がんを予防するために、一次予防としてHPVに感染しないこと、がん検診による早期発見、早期治療が大切です。

その結果、子宮頸がんによる死亡を予防する二次予防に繋がります。

現在日本で承認されているのは、2価のHPV16型、HPV18型、4価のHPV16型、HPV18型、HPV6型・HPV11型に対するものです。

海外では90%以上の子宮頸がんを予防する9価のHPVワクチンが公費で接種されていて、日本でも2020年に7月に承認されています。

HPVワクチンは、ウィルスの感染を予防するもので、すでにHPVウィルスに感染している方には効果はありません。

小学校6年生から高校1年生の女子の方へ

平成25年に予防接種法に基づき定期接種化が認められているのですが、「多様な症状」と呼ばれる副作用の報告があり、国からの積極的な接種は控えられています。

しかし、定期接種化への法的な考えは変わらず、小学校6年生から高校1年生の女子であれば、公費で摂取することはできます。

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、定期接種として3回打たなければ効果を発揮しません。高校1年生の女子の方はこの9月中から摂取しなければ間に合わない計画になります。

自費接種では3回で約5万円ほどかかるので、是非早い段階でHPVワクチンについてご家族で話し合う機会を作って頂ければと思います。

副作用は、一般的に注射を打った場所が発赤したり、腫脹、かゆみが数日続いたり、まれに発熱することがあります。

疲労感、筋肉痛、関節痛、頭痛、胃腸の不快な症状なども報告されています。重篤な場合は、アナフラキシー症状を呈することがあるので、接種後30分は院内で待機してもらいます。これは、インフルエンザなどの予防接種と同じです。

多様な症状について

報告された「多様な症状」ですが、平成28年に厚生労働省研究班による全国疫学調査の報告により、HPVワクチンの接種していない女子でも、HPVワクチンを接種した女子と同様な症状が一定の人数でもあり、「多様な症状」」がワクチンを接種したからというわけではないことが示されています。

同じく、名古屋でおこなわれた調査でもHPVワクチンを接種した女子が「多様な症状」を表すという因果関係の証拠には乏しいとも示されています。

HPVワクチンを打ったことが原因でない、機能性身体症状と考えられると発表されています。

世界的には安全性が認められたワクチンであり、オーストラリアでは、2028年に子宮頸がんの患者がほぼ0になるようにシミュレーションがされて、HPVワクチンの接種が進んでいます。

全世界の女性が子宮頸がんで命を落としたたり、子宮を失くしたりするリスクがないように、ワクチン接種と子宮頸がん検診の両方で病気の撲滅を目指したいものです。

HPVワクチンの接種についてご家族でよく考えて話し合う機会を是非作ってください。

詳しくは下記のホームページに記載されているので、参考にしていただければと思います。