「越脾加朮湯」(えっぴかじゅつとう)

麻黄(マオウ)、石膏(セッコウ)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、白朮(ビャクジュツ)の6つ生薬からできています。

麻黄:発汗、鎮痛、鎮咳、去痰、利尿作用があります。

石膏:余分な水分を排出する作用、炎症を取り除く作用があります。

生姜:発汗や健胃、鎮吐などの効能があります。

大棗:健脾、鎮静などの効能があります。

甘草:健胃、鎮痛、鎮痙、去痰などの効能があります。

白朮:健胃、整腸、利尿の効能があります。

「越婢加朮湯」に入っている「麻黄」は、葛根湯にも使われる生薬ですが、ここではむくみを改善するために入っていて、皮膚表面の空気と接触する部分の血流を改善し、消炎作用のある「石膏」と合わさることで効果を発揮します。

むくみが関係するのは、身体を構成している気・血・水の働きです。臓器は、肺、脾、腎の3つですが、水分代謝に一番関わるのは腎の機能です。身体の中で水分は、肺や脾の働きで全身に運ばれて、不要な水分は膀胱にいき尿として排出されますが、必要な水分は再吸収され、その調節を腎が担っています。

風邪について

風邪と書いてふうじゃと読みます。

日本では、風邪と言うと風邪を引いたと通じますが、中国では風邪は感冒です。風邪は、漢方の風邪(ふうじゃ)の読み方を変えて使われています。

少し詳しく話すと、漢方的な考え方で、自然界の気候の変化や、ウイルス、細菌などの病原微生物を風、寒、暑、湿、燥、火の6つに象徴されますが、この6つに「六淫(りくいん)」と呼ばれる6つの邪が取りつくことで、病気を引き起こさせるとされています。

「風(ふう)」が病を引き起こせば「風邪(ふうじゃ)」となり「風邪(かぜ)」という漢字が漢方の世界から引用されていることが分かります。

漢方での「風邪(ふうじゃ)」は、自然界で吹く「風(かぜ)」のことで、風は突然発生したり、流れたりします。このように突然発生したり、止んだりする現象と似た症状の原因となるものです。

同じように、寒冷は「邪」、湿気は「湿邪」と呼ばれて、自然界の様子と似た症状を似た症状を引き起こすとされています。

風邪(ふうじゃ)とは

風邪はカゼの初期症状などをもたらすものです。寒気、発熱、喉の痛み、咳、発汗、頭痛、めまいやふらつき、鼻水や鼻づまりなどになります。症状の移り変わりが速いこと、上半身の症状や他の邪をともなって身体に症状が現れます。

寒邪(かんじゃ)とは

寒邪は冬の寒さやクーラーの当たり過ぎなどにより、引き起こされる症状です。強い寒気、頭痛、首肩の痛み、関節痛、下痢などになります。冷えによって症状はさらに悪くなります。

暑邪(しょじゃ)とは

暑邪は夏の暑さや高温となるような住環境などが原因で現れます。症状は高熱、顔面紅潮、口の渇き、発汗過多、だるさ、などです。熱中症と同じような感じです。

湿邪(しつじゃ)とは

湿邪は梅雨時の湿気や通気性の悪い環境が原因になり、だるさ、頭痛、むくみ、吐気、下痢、腰痛や関節痛、湿疹などです。湿邪による痛みは雨の日や低気圧、台風の接近によって現れやすいです。

燥邪(そうじゃ)とは

燥邪は乾燥した気候などに現れる症状で、口、喉、鼻、眼、皮膚などの乾燥、乾いた咳、切れにくい痰、喉の痛み、便秘などの症状が現れます。

火邪(かじゃ)とは

火邪は炎症や熱感をともなう症状です。カゼによる喉の腫れや痛み、痰をともなう咳、眼の充血、発熱、頭痛などがあります。イライラ感、落ち着きのなさや寝つきの悪さにもつながります。鼻血が出る、皮下出血、不正性器出血などの症状もそうです。

火邪と似た言葉に熱邪(ねつじゃ)と呼ばれるものもあり、ほぼ同ですが、病状火邪の方がより強いことで使い分けされることもあります。

風邪(ふうじゃ)を撃退する

上記で説明した風邪(ふうじゃ)が悪さをして、脾や肺に影響を及ぼします。「越脾加朮湯」(えっぴかじゅつとう)は風邪(ふうじゃ)による影響で現れた症状を改善することができます。

身体の表面のむくみや腫れは、風邪(ふうじゃ)によって脾や肺が傷ついて、不要な水が身体に停滞し、それが肌の表面に溢れてむくみとして現れます。症状は上半身現れることが多いのですが、全身の局所部分に起きることもあります。

風邪(ふうじゃ)が脾の働きを弱らせ、停滞した水と結びつき、溜まったモノだけを抜き取ります。西洋薬の利尿剤の働きとは違います。
風邪(ふうじゃ)によって弱った脾や肺を立て直す働きもあります。

発汗を即して、悪いエネルギーである風邪(ふうじゃ)をはねのけて、肺や腎の働きを正常に戻していきます。

体力は中程度、喉の渇きが強く起こり、むくみが気になる症状に悩まされる方は一度お試しください。

関節の腫れや痛みに有効

「越婢加朮湯」は、炎症によって関節が熱をもった感じで腫れていて関節液がたまっているような場合などにも用いられます。

処方の目安は、むくみ、口が渇く、尿や汗の変化ですが、関節炎の痛みをロキソニンなどの痛み止めでなんとか抑えられていますが、痛みは引いても腫れが残っている場合にも使えます。

リュウマチやメニエールのような症状、痛風、腎炎、膠原病などにも効果が期待できます。

皮膚炎にも有効

虫刺されにも越婢加朮湯は使えます。越婢加朮湯の効能効は、密かに皮膚炎があります。湿疹など以外の虫刺されにも使えます。

分泌物が多い皮膚炎、熱感や発赤の強い湿疹や皮膚炎などの皮膚疾患にも使われます。又、夜尿症などにも使われることがありますが、
いずれも病気の初期段階で、比較的体力のある人に向く処方になります。