体外受精について

生殖補助医療は、「体外受精」「顕微授精」「凍結融解胚移植」の3つに分けられます。

「体外受精」は、卵巣から直接医療用の細い針で卵子を取り出し、体外(シャーレ内)で精子と受精させその胚を子宮内に戻します。

「顕微授精」は、体外(シャーレ内)で精子と卵子が受精しない場合に、顕微鏡を用いて1匹の精子を卵子の中に注入して、受精させてから子宮内にその胚を戻します。

「凍結融解胚移植」は、体外受精で得られる受精卵が多かった場合、余った胚(余剰胚)を凍結しておいて、1度の体外受精で妊娠が成立しなかった場合や、再び赤ちゃんを望んだときに子宮に戻す方法です。

生殖補助医療の手順

体外受精は、排卵を誘発することから始まります。そして、卵巣からエコーを使って卵を採取し、体外(シャーレ内)で受精させ培養して卵の分割を確認して子宮内に卵を戻す胚移植という流れになります。

排卵誘発

月経が始まって3日目からFSH、hMGの注射を毎日打ちます。質の良い卵子をいくつか育て採取するために必要なことです。

患者様によって注射の種類や投与する量は違います。

卵子を採取する前に排卵してしまわないように、スプレキュアなどの排卵を抑制する点鼻薬も使います。

排卵抑制の開始時期により、ショート法・ロング法などがあります。

採卵・採精

採卵のタイミングは、超音波検査で卵胞の数や大きさを確認することと、E2(卵胞ホルモン)のホルモンの値から判断します。直径20㎜くらいの卵胞が数個認められた時にE2(卵胞ホルモン)を確認し、採卵35時間前に排卵を即す注射hCGを打ちます。

卵子が育つスピードは個人差があり、月経が開始して10日から14日目に卵子が育ってきますが、充分に育った卵子を採取します。年齢が若い人ほど育つ卵胞の数が多い傾向があります。

35歳以下の方や質の良い卵子をいくつか採取しても、多胎妊娠を避けるために移植は1個のみです。残った卵子は冷凍保存させていただきます。35歳以上の方は2個戻します。

採卵は、経腟超音波を用いて卵巣の位置、血管の位置など確認し、膣壁から卵巣に向かって針を進めて卵胞を確認しながら卵胞液ごと卵子を採取します。

採卵の手術は、局部麻酔で行います。手術時間は短く、止血が確認できれば2時間安静後に起きあがることもできます。

受精・培養

採取した卵子と精子は、その日に受精を行います。そのため、パートナーの方にも一緒に来院して頂き精子を採取して頂きます。

採卵した卵子は培養液の中で前培養して成熟させます。培養した精子と受精させてインキュベーターの中で受精を完了させます。翌日(受精操作後約17時間)、2つの前核と2個の極体の確認で受精の完了です。

受精卵は胚と呼ばれそのまま培養を続けます。胚は、受精2日後に4細胞期、3日目には8細胞期、4日目には16細胞期以上になり桑実胚となります。5日めには細胞の内部細胞塊と栄養外胚葉に分かれた胚盤胞と成長していきます。

胚移植

着床に適した状態まで胚が育ったら、子宮内に移植します。初期胚移植の場合は月経開始から12~17日目、胚盤胞移植の場合は月経開始から15~20日目に行います。

胚移植は、子宮頚部を洗浄して子宮頸管粘液をできるだけ取り除き、子宮底から1~1.5㎝ほどのところにそっと胚を移植します。

胚にはグレードがあります。初期胚はG1からG5まで、胚盤胞は1から6まで分類されます。グレードのよい胚が妊娠率が高いことからグレード評価の良い胚から移植します。

順調に成長した形の良い胚は問題が少ないと判断しますが、染色体異常がないというわけではありません。

グレードが高くない胚は妊娠率が下がると言われていますが、決して妊娠しないわけではありません。受け取り側の内膜の状態が重要です。

妊娠の判定

胚移植後、初期胚の場合は3~5日後、胚盤胞の場合は1~2日後には着床するといわれていますが、着床してすぐに妊娠判定が可能になるわけではありません。

通常、胚移植から14~21日(2~3週間)後に、尿検査などを行いhCGホルモンの分泌量を測定し妊娠を確認します。

胚を凍結保存することもある?

受精から2~3日後の受精卵を「初期胚」、5~6日後には「胚盤胞」となりますが、どの段階でも移植することは可能です。

採卵を行った周期に移植することを「新鮮胚移植」と呼び、凍結しておいた胚を移植することを「凍結胚移植」といいます。

胚移植する前には子宮内膜の状態を最適にしておきますが、着床の環境が十分でないと判断した場合は、この周期では胚移植をせずに先延ばしにすることもあります。

そして、凍結しておいた胚を子宮内の環境がを整ったときに、より妊娠しやすいタイミングで凍結胚を融解し、あらためて胚移植を行います。